ECサイトにおいて返品は避けられない消費者の行動です。
むしろ、最近のECサイトにおけるトレンドとしては返品をサービスとして捉えて、他社との差別化や顧客満足度、顧客体験向上の一環として取り組むところが増えています。
しかし、公益社団法人日本通信販売協会のトラブル事例を参照すると、「ネット通販、返品条件に納得できない!」「返品したら、無料のはずの送料が!」といった事例が並んでいて、「返品はサービス」というレベルにはない実情も見えてきますし、消費者側の一方的な思い込みでのクレームも垣間見えます。
さらに、海外での日本よりも格段にお客様寄りの返品ポリシーや、その実態について日本のお客様も知られるようになっているため、国内の返品ポリシーについて不満に感じることがあります。
つまり、「返品」はお客様へのサービスにもなりますし、トラブルになることもあると認識する必要があります。
「返品」に関連する法律の理解を深めることは、法律をベースとした返品ポリシーの作成に繋がり、万一の時の防衛手段にもなり得ます。
そこで本記事では、日本の返品に関する法律について解説しています。
「返品ポリシーを競合他社と比べて遜色ないレベルにしているが法律についてはあまり意識したことがなかった」
「お客様から強烈な返品依頼があってトラブルを怖れて受け入れたが法律的にはどうなのだろうと思った」
「自社ECサイトの返品ポリシーが法的に満足のいくものかを知りたい」
などと考えている方には必見の記事です。
目次 1. 日本の返品に関する法律 1-1. 法律と契約の関係について 1-2. 返品に関する法律 2. クーリングオフ制度 3.海外の返品法律 3-1. アメリカの返品事情 3-2. 中国の返品事情 3-3. イギリスの返品事情 4. まとめ |
ECサイトで商品やサービスを購入する、販売するという行為はECサイト事業者と購入者との間での契約行為となります。
2020年4月1日に改正された民法により「契約自由の原則」が以下のように明文化されました。
第521条(契約の締結及び内容の自由) ・何人も、法令に特別の定めがある場合を除き、契約をするかどうかを自由に決定することができる。 |
このように、契約は「契約自由の原則」で結ばれていますので、基本的には法律よりも優先されます。
「基本的」にはと書いたのは例外事項があるからです。契約よりも優先される強行規定というものが法律にはあります。
一例として、以下のものがあります。
第90条(公序良俗) 公の秩序又は善良の風俗に反する法律行為は、無効とする。 |
当事者の合意があったとしても、第90条に反する契約をした場合には、その契約は無効になります。これが強行規定です。
ECサイトにおいて関連する法律においては「消費者契約法」「特定商取引法」「割賦販売法」には強行規定が多く存在します。
返品ポリシーなどを制作する際は、上記の法をしっかりと確認し、強行規定に反さない契約をするように心がけると良いでしょう。
日本には「事業者は消費者の返品に応じる義務がある」などの法律が存在していないため、事業者は購入者の返品希望を了承する必要はありません。
つまり、あくまで返品は事業者側によるサービスとなります。
そのため、購入者側に非があるような返品希望には応じないことが多いです。
返品処理した商品は通常の商品と同じ状態ではないため、価格を下げて販売する必要があります。
例えば、購入してすぐにシミが付いた衣類の返品を実施する場合、新品商品にはないシミを取る作業や取れない場合は、通常よりも大きく価格を落とす必要があるでしょう。
そのため、返品に関する法律がない日本では、顧客都合の返品を実施するケースは少なく、店舗ごとに独自の返品ポリシーを設ける必要があります。
返品ポリシーの詳細については弊社の以下の記事を参考にしてください。
売上に直結する返品ポリシーの書き方とは?重要性や成功事例まで徹底解説!
日本では返品に関する法律はありませんが、「クーリングオフ」と呼ばれる制度が存在します。
クーリングオフが適応可能な契約は、以下の通りです。
・訪問販売
消費者の自宅を訪れて販売するものや、キャッチセールスなど
・電話勧誘販売
事業者が電話で商品の販売等を行う
・特定継続的役務提供
エステティック、語学教室、家庭教師、学習塾、パソコン教室、結婚相手紹介サービス、美容医療のサービスで長期・高額の契約を行うもの
・訪問購入
消費者の自宅を訪れて買取を行うもの
・連鎖販売取引
・業務提供誘引販売取引
仕事を紹介するかわりに商品を購入させるもの
上記のような商品・サービス販売形態の場合、契約成立から8〜20日間の間に申し出ることで、契約を解除可能です。
ただし、明確に購入の意思がある場合や8〜20日間以上の日数が経過している段階で、申し出たとしても契約は解除できません。
購入した商品・サービスがクーリングオフ制度の対象かわからない場合は、近隣の消費生活総合センターに連絡すると良いでしょう。
クーリングオフ制度に関しては、下記記事で詳しく解説していますので、合わせてチェックしてみてください。
日本において返品はECサイトでは5~10%程度であり、諸外国と比較すると返品率は低い方です。
ただし、今後も低いままかというとグローバルな世の中であり、しかも、アマゾンという米国資本の企業が日本のEC業界で大きな存在であるため欧米と同じようになってしまうと考えた方がいいでしょう。
続いては、以下3カ国の返品事情について解説していきます。
・アメリカ
・中国
・イギリス
海外の返品法律について詳しく知りたい方は、こちらの記事をご参考にしてください。
アメリカにおける返品に関する法律は次のようになっています。
米国では、オンラインのみで購入した製品に関しては商品購入後一定期間内に無条件で商品を返品できる「クーリングオフ」は適用されません。※1
クーリングオフが提供されるのは訪問販売で、販売場所が自宅の場合は25ドル以上、自宅以外の一時的または短期的に借りた施設での販売では130ドル以上の場合に「クーリングオフ」は適用されます。期間は3日間です。※2
※1 出典:「米国における電子商取引市場調査」2018年3月 日本貿易振興機構(ジェトロ)ニューヨーク事務所
※2 出典:「Rules and Regulations」Rules and Regulations
しかし、実際の実店舗やオンラインショッピングでの返品ポリシーは消費者寄りのものとなっております。
そのためか、Forbes社の調査(※3)によりますとアパレル、アクセサリー、フットウェア、家具などのカテゴリーにおけるオンラインショッピングの返品率は25~40%に達しています。
※3 出典:「Many Unhappy Returns: E-commerce's Achilles Heel」
具体的に販売者の返品受入状況を見てみましょう。
・ノードストローム(NORDSTROM)
ノードストロームは米国で最大の百貨店チェーンでカスタマーサポートに定評あることで有名です。
購入したファンデーションを3回程度使用した後にレシート無し、箱無しで返品を依頼したところ受け付けてくれました。
出典:「アメリカのデパートNordstrom(ノードストロム)はレシートなし使用済み化粧品でも返品可能!」
・コストコ
コストコは会員制倉庫型ストアで日本にも店舗が多く存在します。
日本においても「商品に満足できなかった場合は商品と引き換えに代金を全額返金いたします」とあります。
返品制度が寛容すぎてハワイのコストコでは観光客が購入したシュノーケリングを使い終わったら返品するということもあるようです。
また、返品が多いということで「返品」をビジネスにする企業も登場しています。
その一つが「Happy Returns」です。
Happy Returnsは返品プロセスを請け負う企業です。
返品を受け付ける拠点を設置していて、消費者は梱包不要でその拠点に商品を持ち込むことができ返金を受け取ることができます。
返品された商品は仕分けしてクライアント企業が指定した場所まで届けます。
中国においても返品に関する法律が制定されています。
2017年1月に「网络购买商品七日无理由退货暂行办法」(インターネット購入商品の7日間無条件返品についての暫定弁法)が公布され2017年3月15日より施行されています。
内容としては、ネット販売事業者は7日間無条件返品の義務を履行しなければならない。
また、ネット取引プラットフォーマーはネット販売事業者が7日間無条件返品の義務を履行するよう管理監督を行い、技術的保証を提供しなくてはいけないというものです。
返品時の規定としては、
1. 返品時には本体のみではなく、部品やプレゼントも返品が必要
2. カード決済の場合には決済手数料は返金する必要なし
3. 返送料は消費者負担
その他、例外となる商品についても規定されています。
実際のECサイトにおける返品事情は法律よりもさらに消費者寄りのポリシーとなっています。
法律で決められている7日間無条件返品以外に「三無返品」(理由無し、現品無し、レシート無し)が行われています。
返品自体もスマホから返品するボタンをタップして、返品方法を「自宅に来てもらう」を選択すると希望日時に宅配業者が引き取りに来てくれるというサービスを提供している業者もあります。
イギリスではクーリングオフに相当する規定が「2013年消費者契約規則(The Consumer Contracts (Information,Cancellation and Additional Charges) Regulations 2013)」で定められています。
対象は遠隔契約(オンラインショッピングを含む)と訪問販売で期間は14日間となっています。
イギリスにおける実際の返品事情は販売店の返品ポリシーが消費者寄りになっているため返品は盛んに行われています。
無料で返品できるのがほとんどで、送られてきた箱の中には最初から返品用のラベルが入っていて、箱自体が返品用に再利用できるようになっているのも多いです。
また、服についてはタグがあれば返品可なので、街中でタグを付けて堂々と歩いている人を見かけることもあります。
返品のシステムも整っていて、チェーン店なら購入したお店とは別のお店でも受け付けてくれたり、返品専用のカウンターがあったりするところもあります。
上記のような返品ポリシーを持つ海外の小売事業者が日本市場に参入することにより、日本の小売事業者の間でも返品ポリシーの変化が見られます。
ファッションアイテムのオンラインストア「LOCOND(ロコンド)」は「自宅で試着、気軽に返品」をうたい急成長しています。他社も追随するように、返品ポリシーを変更しており、このことによって国内でも返品率が欧米並みに上昇する可能性が高いと予想されます。
今後は、返品をマイナスと捉えず、顧客接点として考え売上拡大につなげるということが重要になります。
以下では、返品に関する便利なサービスをご紹介いたします。
Recustomer Return&Cancel(リカスタマー リターンアンドキャンセル)は、返品・交換・キャンセルを自動化するサービスです。
お問合せ対応業務の削減はもちろん、スムーズな返品フローを実現することで顧客満足度向上にも繋がります。
■Recustomer Return&Cancelの特徴的な機能
・返品、交換の自動化
・注文キャンセルの自動化
・返品、交換のデータ分析
1)お問い合わせの82%を自動化する交換・返金の自動化
事前に返品ポリシーを設定しておくことで、返品や交換の承認・拒否を自動で処理することができます。承認された場合、自動で在庫を参照し、交換商品をユーザー自身で選択、その後在庫引当も自動で行うことができます。
2)対応時間0分を実現するキャンセル自動化
キャンセルのリクエストを受けると、自動で配送ステータスを確認しキャンセルの承認・拒否を判断します。承認された場合は、自動で配送停止作業、返金作業を行います。
3)返品・交換・キャンセルのデータ分析
返品・交換・キャンセルデータを収集、分析することができます。これによりECサイトや返品率の改善、生産計画マーケティング施策、商品企画に活用することができます。
サービス名:Recustomer Return&Cancel
会社名:Recustomer株式会社
サービスサイト:https://recustomer.me/returncancel
料金:お問合せ
返品に関して日本ではまだまだ消費者に厳しいポリシーを設定している販売事業者が多いです。
米国や中国、イギリスの返品に対する考え方は消費者寄りで、返品を前提にしてシステムを組み立てているように思えます。
反対に日本では返品は例外事項としてシステムを組み立てている事業者が多いようです。
しかし、アマゾンをはじめとする様々な海外の事業者がすでに日本において販売を行っていますので、彼らが持っている返品に関する考え方が日本においても浸透しつつあります。
日本の消費者も返品は気軽にできるものというマインドになってきていますので、事業者も返品対応が柔軟にできる体制をとってみてはいかがでしょうか。
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