ECサイトを運営する上で、物流領域に対する知識は必要不可欠です。物流領域を最適化することで、コストの削減や顧客満足度の向上が見込めます。
しかし、「物流領域の分類ってなに?」などの疑問をお持ちの方も多いでしょう。
そこで本記事では、物流領域における動脈物流と静脈物流の概要や種類・課題・実例について、特にリバースロジスティクスと呼ばれる静脈物流にフォーカスを当てて解説します。
「動脈物流と静脈物流の違いって何?」
「静脈物流にはどんな種類があるの?」
「実際に静脈物流を最適化するためにはどうしたらいいの?」
などとお考えの担当者に必見の記事です!
※以下、静脈物流と表記
目次 1. 物流領域の種類とは? 3. 静脈物流の種類 4-1. 顧客に対しての課題 4-2. 環境問題に対しての課題 5-4. 返品自動化サービス(リカスタマー) 6. 静脈物流の事例 6-1. ユニ・チャーム 6-3. ONE NOVA 7.まとめ |
物流の領域を大きく分けると、動脈物流と静脈物流の2つに分類されます。
それぞれの概要について解説します。
動脈物流とは、原材料の調達から商品の加工・製造を経て、最終的にエンドユーザーに届くまでの一連の物流の流れのことを指します。
商品が顧客に届くまでの様子を、血液が心臓から体に届く動脈に例えているため、動脈物流と呼ばれています。
動脈物流はEC事業において必要不可欠な流れであり、正常に機能しなければ、製造者から顧客に商品が届くことはないため、非常に重要であるといえます。
静脈物流とは、物流チャネルにおける顧客から、製造者へと逆流した物流のことを指します。
つまり、静脈物流とは返品対応のことであり、製造者から顧客のもとに商品が届く物流とは逆になるため、静脈物流と呼ばれているのです。
静脈物流は、返品対応全体を表しているため、返品が必要な商品の回収や廃棄も含まれます。物流の規模では製造者から顧客に商品が届く動脈物流の方が多く、静脈物流は圧倒的に少ない物流と言えるでしょう。
しかし、静脈物流がなくては、動脈物流が正常に稼働できないため、必要不可欠な物流機能と言えるでしょう。
動脈物流の種類は、大きく分けて以下3つに分類されます。
・調達物流
・社内物流(生産物流)
・販売物流
順に解説します。
調達物流とは、製造に必要な部品や原料の調達に伴う物流のことです。例えば、ECサイトで販売する服を仕入れる作業も調達物流に分類されます。
取引先から商品を購入・仕入れる作業は、全て調達物流と呼ばれると考えておきましょう。
従来までのBtoB運営では、商品価格に送料が含まれているため、調達物流においてコストダウンが難しいと考えられていました。
しかし、EC事業の需要増加や物流ラインの労働者減少によって、調達物流のコストダウンが重視されています。円滑にビジネスを進めるためにも、調達物流のコストカットは非常に重要な部分と言えるでしょう。
社内物流(生産物流)とは、自社工場間の商品や原料の輸送、拠点から倉庫までの商品移動など、社内で発生した物流のことです。
移動と生産業務の関連性が深いことから、生産物流とも呼ばれています。
生産過程の生産性を向上させるためには、社内物流のコストカットや効率を高めることが重要です。大規模な生産・物流ラインの場合、一度商品を倉庫に集めてから、顧客のもとに配送するケースが多いです。
しかし、配送商品量が少ないのにもかかわらず、一拠点に商品を集めていては効率が悪いことがあります。
このように、社内物流はコストとメリットを総合的に判断した上で、対策を取る必要がある物流領域と言えるでしょう。
販売物流とは、顧客に対して商品を配送する物流のことです。BtoB・BtoCともに、あらかじめ定めた納品ルールに則り商品を配送します。
特に企業間の取引はオーダー簿締切や納期、付帯業務に関して細かく取り決めるケースが多いです。
また、販売物流の現場では、営業担当ではなくドライバーの方が顧客と接する機会が多いことから、一定の清潔感や臨機応変な対応が求められます。
事前に取り決めた契約内容と現場で求められる対応が異なる場合は、従業員への業務負担やコスト増加が懸念されます。そのため、定期的に現場と契約内容の差異を確認することで、スムーズに販売物流を構築できるでしょう。
静脈物流は、大きく分けて以下3つに分類されます。
・回収物流
・返品物流
・廃棄物流
順に解説します。
回収物流とは、商品の不具合・修理を伴うリコールによる回収作業を指します。商品納品時に発生したパレットや必要器具を回収することを回収物流と呼ぶケースもあります。
静脈物流では、商品不具合によるリコールと必要器具の回収全般を回収物流と表すケースが多いです。
回収物流は、この後紹介する返品物流・廃棄物流と混同されがちになるため、状況に応じて確認する必要があります。
返品物流とは、不具合や破損により顧客から返品が申し出た商品の回収作業です。売れ残り商品の移動なども、返品物流に分類されます。
顧客が商品を購入した企業に対して何らかのアクションを取り、返品したい旨を伝えることで、返品物流が発生します。多くの場合、商品を出荷した状態とは異なる形で返品されるため、不足物や破損がないか確認する作業が必要です。
また、返品物流は本来完結していたはずの物流が再開されるため、着払いや輸送コストなど、企業側の負担が増加する可能性が高いです。
そのため、返品物流の数を削減することで、企業の負担を大きく軽減できるでしょう。
廃棄物流とは、廃棄に関連する物流のことです。基本的に製品として使い道がなくなり、回収やリサイクルできない場合は、廃棄されることになります。
一般廃棄物・産業廃棄物にかかわらず、廃棄物の流れを廃棄物流と表します。
また、環境問題が年々深刻化しており、SDGsにより世界的に資源の回収が注目されています。物流業務で発生した資材や必要器具は、役目を終えたとしても利用できるケースがあります。
さらに、エアコンや冷蔵庫などの一部家電は「家電リサイクル法」によって廃棄方法が定められており、法律に則り対応することが重要です。
このように、環境問題に配慮した回収作業についても、廃棄物流に分類されます。必要に応じて廃棄物流は発生しますが、環境に負荷を与えることなく対応することが重要と言えるでしょう。
静脈物流最大の課題は「仕組みの複雑化」です。
従来の静脈物流では、顧客からの返品を受け付ける物流と、一般・産業廃棄物の回収にそれぞれ課題が見受けられます。
それぞれ詳しく解説します。
BtoB・BtoCともに、顧客の商品を回収する静脈物流では、配送ルートや業務委託により「誰が、何を運んでいるのか」が複雑化しています。
小規模事業の場合は全て自社で管理しているため、感じるケースは少ないです。しかし、中小企業になると配送業務の規模が大きくなり、膨大なオペレーションが存在します。
返品商品を回収するまでの流れが複雑化することで事業者の管理が行き届かなくなるため、顧客満足度の低下も懸念されます。そのため、業務規模が大きくなる場合は、できるだけオペレーションを簡略化した環境を構築する必要があるでしょう。
静脈物流の廃棄物は、一般家庭から出る「一般廃棄物」や企業や店舗から発生する「産業廃棄物」の2つに分けられます。
一般廃棄物は地方自治体が回収オペレーションを展開しているため、非常に簡略化されています。
一方、産業廃棄物の回収現場は、各企業が店舗や企業と契約を結び対応するため、オペレーションが複雑化する傾向にあります。複雑化した回収物流のオペレーションは、プラスチックゴミのリサイクルをめぐる論争にも発展しており、環境問題にも影響が及んでいます。
そのため、静脈物流の複雑化したオペレーションを簡略化することで、環境問題も解決できると言えるでしょう。
従来の静脈物流ビジネスは、他の企業との差別化を図るための施策と言えるものでした。
しかし、環境問題やEC需要が増加したことで、新たなビジネス形態が登場しています。
ここでは、以下4つの新たな静脈物流のビジネスを解説します。
・宅配回収ビジネス
・宅配修理ビジネス
・お試し・返品無料サービス
・返品自動化サービス
順に解説します。
宅配回収ビジネスとは、佐川急便が提供している事業者の業務内容に応じた登録受け付けをページで簡単に作成できるシステムです。
事業者が抱える回収や同時交換業務を行う際の課題に対して、同サービスを活用することで解決が可能です。
一つのシステムで物流状況を確認できるため、シームレスな顧客対応や情報共有が実現できるでしょう。
URL: 回収サポートシステム(回収くん)
宅配修理ビジネスとは、佐川急便が提供している動脈物流と静脈物流の流れを把握し、顧客に対して最適な物流提案をするサービスです。
豊富な経験を活かして、通常の返品や回収も輸送網を利用し、顧客のEC運営に最も適した組み合わせを実行します。
同サービスを活用することで、物流プロセスを簡略化し、効率的な商品配送が可能になります。
URL: リコール・自主回収サポート
ECサイト上で商品を購入できることは画期的なシステムであり、最近では電子商取引の進展やコロナウイルスによる巣篭もり需要の増加により、ネットショッピングの需要は急増しました。
しかし、オンライン上で商品を購入する最大の懸念点は商品を実物で確認できないことであり、オンラインでの商品購入に消極的な姿勢を持つ人が多く存在していました。
その現状をもとに、最近では、お試し・返品無料サービスを導入して他者との差別化を図るEC事業者が増えてきています。
このような顧客心理をついた返品リスク対応も、今の時代では重要な静脈物流ビジネスと言えるでしょう。
返品送料無料に関して詳しくは下記記事にて詳しく紹介しているので、ぜひご参考にしてください。
RecustomerはRecustomer株式会社が提供する、返品・交換・キャンセルなどECサイトにおける返品に関するCS業務を自動化するサービスです。
同サービスを活用することで、返品管理や顧客とのやりとりをシステム上で行うことができるため、大幅な工数の削減や顧客体験の向上が実現可能です。
URL: Recustomer
続いては、静脈物流ビジネスの成功事例を3つ解説します。
・ユニ・チャーム
・セブン&アイ・ホールディングス
・ONE NOVA
日用品を取り扱うユニ・チャームでは、紙おむつのリサイクル技術を活用した、再資源化した原材料を用いた紙おむつ等の試作品を発売すると発表しています。
ただ環境に良い紙オムツを販売するのではなく、紙オムツの処理に悩まされていた鹿児島県志布志市と連携し、リサイクルセンターの静脈物流を変更することで、前述した商品の発売が決定しているのです。
紙おむつの回収量を正確に把握することで、再生紙を利用したおむつの開発・発売を可能にしています。
セブン&アイ・ホールディングスでは、顧客が店頭にペットボトルを持ち込むことで、リサイクルポイントを得られるサービスを展開しています。
獲得したリサイクルポイントは、電子マネーの「nanacoポイント」に変換が可能です。
購入したペットボトルを店舗で静脈物流することにより、回収だけではなく、顧客の接点を増やしています。
nanacoポイントは全国のセブンイレブンや関連店舗で使用できるため、来店頻度を高める結果となり、売上増加にも成功しています。
ONE NOVAでは、静脈物流において、交換業務における在庫の確認作業や、返品・交換業務におけるユーザーとのやりとりに時間がかかるといった課題がありました。
しかし、Recustomerを導入することで、返品対応時間が10分の1に減少し、返品・交換無料制度でEC平均水準より2倍高い購入率も実現することができました。
圧倒的な工数の削減により、空いた時間で他の業務への着手にも成功しています。
いかがだったでしょうか?静脈物流は、物流領域にはなくてはならない存在です。
事業者から顧客に届ける動脈物流の方が圧倒的に市場は大きいですが、静脈物流に着目したビジネスを展開することで、顧客との接点が増加し、売上増加が見込めます。
しかし静脈物流は、オペレーションが複雑化しているといった課題も存在します。
自社内の物流オペレーションを静脈物流ビジネスを活用して簡略化することで、静脈物流を効率化していきましょう
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