KPIはKey Performance Indicatorの略で、日本語だと「重要業績評価指標」と訳されています。
つまり、その仕事が上手くいっているかどうかを判定するための指標がKPIです。
KPIを測定することによって、ビジネスが正しい方向へ進んでいるのか、修正が必要なのかが分かります。
また、KPIを達成する責任を個人が持つことにより、組織において個人を評価する項目の一つにもなります。
このように組織においても個人においても重要なKPIをカスタマーサクセスという観点から説明していきます。
「KPIが大事なことは理解しているけれど、カスタマーサクセスでどのように決めていけばいいかわからない」
「カスタマーサクセスのKPIを決めているがKPIを達成しても売上につながらない」
「年度初めにKPIを決めているが、その後のアクションがKPIに基づいていない」
などとお考えの担当者には必見の記事です!
目次 2. カスタマーサクセスとカスタマーサポートにおけるKPIの違い 2-1. カスタマーサポートにおけるKPI 2-1-1.一次応答時間 2-1-2. 処理時間 2-1-3. リピート率 2-1-4. 問題解決までのやりとりの回数 2-1-5. エスカレーション数 2-1-6. 対応への顧客満足度 2-2. カスタマーサクセスにおけるKPI 2-2-1. オンボーディング完了率 2-2-2. アップセル/クロスセル率 2-2-3. チャーンレート 2-2-4. リテンションレート 2-2-5. LTV 2-2-6. NPS 2-2-7. CSAT 2-2-8. 売上継続率 3-1. KGIに沿ったKPIを設定する 3-2. 顧客視点で考える 3-3. 自社に合ったKPIかどうかの確認をする 3-4. 定期的にKPIを見直しする 3-5. PDCAを回しやすいKPIを設定する 4. まとめ |
カスタマーサクセスとは直訳すると「顧客の成功」であり、顧客が成功体験を得ることを目的とした考え方です。
カスタマーサクセスにおける「顧客の成功」の定義とは、顧客がその商品やサービスを利用することで満足のいく成果を得られた状態を指します。このお客様の目標を達成するために、カスタマーサクセスはお客様に対して能動的なアクションを行う必要があります。
つまり、お客様からの働きかけがなくても、カスタマーサクセスの担当者はお客様の利用履歴などを読み解いて先回りをしたアクションを起こす必要があるのです。
したがって、カスタマーサクセスのKPIはお客様の成功に関わる項目となります。
例えば、自社の商品やサービスがどれくらいの期間でお客様が使えるようになったか・継続して使ってくれたかといった内容になります。
カスタマーサクセスとしばしば混同される言葉で「カスタマーサポート」があります。
どちらもお客様と直接の接点を持ち対応しますが果たすべき役割や目的は違ったものになります。
カスタマーサポートはお客様からの問合せが起点となりますので、カスタマーサクセスとは違い受動的なアクションとなります。
また、カスタマーサポートは自社の商品やサービスに対する、お客様の疑問や困ったことなど「お客様の問題を解決すること」が目的です。
したがって、カスタマーサポートのKPIはお客様の問題解決に関わる項目となります。
例えば、問合せがあってから最初の回答を行うまでの一次応答時間や質問に回答するための時間、後処理の時間などの処理時間などといったものです。
カスタマーサポートで一般的に設定されるKPIについて個別に説明していきます。
お客様からの問合せが入ってから最初の応答までの時間です。
調査によると、約70%の人が回答までに24時間を超えると不満を感じるようです。
また、1時間以上の回答だと早いと感じなくなる人が約半数いますので、1時間が満足度の分岐点と考えられます。
出典:株式会社 PR TIMES「お問い合わせフォーム対応時間と顧客満足度の関係性」
つまり、お客様の問合せに対して完璧な回答するために遅くなるよりは「調査中」という状況連絡でもいいので、 一次回答を1時間以内に返答することが重要と言えます。
1回のやりとりにかかる時間です。電話での応対の場合は電話でやり取りしている時間と記録に残したり、報告したりといった後処理時間も含めます。
処理時間はコストに直接関わる時間ですが、KPIを実現しようとするあまり、お客様とのやりとりをしている時間が十分に取られずに終えてしまうようだと顧客満足度が低下してしまい逆効果になってしまうので注意が必要です。
処理時間に関するKPIの設定値には注意すべきです。
リピート率とは新規顧客のうちリピーターになってくれる割合を表します。
リピート率を重視する理由は新規顧客を獲得するコストに比べてリピート客を獲得するコストが圧倒的に低いためです。
そのことを表すのが「1:5の法則」と呼ばれている法則で、リピート客と比較して新規顧客獲得には5倍のコストがかかるというものです。以下の数式でリピート率を算出します。
リピート率=ある期間内のリピート顧客数÷ある期間内の新規顧客数 |
お客様からの問合せが入って、問題解決するまでに何回かやりとりを行うことがありますが回数が多いとお客様は解決しないことと自分の時間が奪われることで不満をためてしまいます。
やり取りの回数が少ないほど顧客満足度は高くなります。
お客様からの問合せが入る可能性があるものに関してはヒアリングすべき項目をリスト化し、担当者間で共有することによって誰が応対しても1回で漏れなく聞き出せるようにすべきです。
エスカレーションとはカスタマーサポート担当者では解決できずに上位者や開発部門、製造部門と言った部署へ問題解決を要請することです。
エスカレーションが発生する要因としては担当者の権限を越えた値引き要請やマニュアルにない問合せなどで発生します。
マニュアルにない対応の場合は対応策についてナレッジを共有することで次回から担当者間で回答できるようになりエスカレーション数は減っていくことになります。
カスタマーサポートが行った対応に関する顧客満足度をKPIとします。
顧客満足度を測定する方法としてはカスタマーサポートを受けたお客様にアンケート調査をしたり、回答に対してお客様から感謝の言葉が発せられことを確認したりすることで測定します。
顧客満足度アンケートの作成方法につきましては下記記事にて詳しく記載していますので是非ご参照ください。
カスタマーサクセスはお客様を成功に導く支援をすることにあります。お客様が成功することを通じて自社の商品やサービスが継続的に購入されることになります。
したがって、カスタマーサクセスのKPIはお客様の成功に寄与できたかで測定することになります。
直接的にお客様の成功を測定するのは難しいので、間接的にお客様の成功に寄与していると考えられる指標を設定します。
一般的にカスタマーサクセスのKPIとして設定される指標を以下に説明していきます。
オンボーディングとは、顧客が自社の提供するサービス・プロダクトを使いこなせるようになるまで支援するプロセスのことです。
オンボーディングが完了しないと自社の商品やサービスを通じてお客様を成功に導くことが初期段階でできないことになり、リピートや継続はまず期待できないため非常に重要なKPIと言えます。
アップセルとは客単価を向上させるためにより高い商品やサービスプランの購入を促す手法であり、クロスセルとは商品購入を検討している人に対して関連する別商品やサービスの購入を促すセールス手法です。
頻度高くサービスを利用されているお客様へ上位のプランを提案したり、関連する別のプランを提案したりすることでお客様一人あたりの購入単価が増額することができます。
チャーンレートは解約率のことで、お客様がサービスを解約する割合を示しています。
当然、この数値は低く抑えることが売上を維持することになります。
チャーンレートを低く抑えるためにはお客様の成功に自社の商品やサービスが寄与している必要があります。
チャーンレートには次の2種類が有ります。
・カスタマーチャーンレート
一定の期間内に解約したユーザがどの程度の割合で発生したかを示す数値です。
・レベニューチャーンレート
一定の期間内に全体の売上金額のうち解約されたサービスの売上金額の割合を示す数値です。
リテンションレートは定着率や継続率と訳される指標です。
お客様が自身の成功のために必要と感じているのなら継続して使用してくれます。
LTVは「Life Time Value」を略した用語で「顧客生涯価値」と訳されます。
サービスにおいては新規契約してから契約終了までの期間内に購入された金額を表します。
商品においても同様で新規購入から最後の購入までの間に購入された金額を表します。
お客様を獲得して維持するにはマーケティングコストがかかっており、リピートしていただけるコストを1とすると新規顧客獲得には5のコストがかかると言われています。
つまり、一人のお客様を長期間契約いただけたり、リピート購入を何回もして頂けたりすることは利益率が上がることを意味しています。
NPS(Net Promoter Score)は「あなたはこの商品もしくは/サービスを友人や同僚に薦める可能性は、どのくらいありますか?」という質問を行い0~10の11段階で回答してもらうものです。
これにより将来的にお客様がどの程度自社の商品やサービスを使い続けてくれるかを知ることができます。
お客様の主観的な判断をお聞きするものなので、単発で調査するよりも継続的に調査する性格の指標となります。
NPSについて詳しくは下記記事で紹介しているので、気になる方は是非ご覧ください!
CSATは「Customer Satisfaction Score」を略した用語で「顧客満足度」と訳されます。
顧客満足度を測定するためのもので、質問項目はNPSとは違い商品やサービスにあわせた独自の内容となります。
そのため、競合他社と比較するのには使われず、自社で体制の変更やサービスのやり方を変えた場合などのBefore/Afterを知るためや時系列的な変化を知るために測定を行います。
売上継続率は既存顧客の売上が前年度と比較して維持できているかを示す指標です。
売上継続率が100%を超えていれば新規顧客の獲得がなくても売上維持もしくはアップすることができますが、100%を下回っている場合は新規顧客の獲得がないと売上の維持ができません。
新規顧客を獲得するには既存顧客を獲得するコストよりも5倍かかると言われていますので売上継続率が100%を下回っている状態はかなり危機的な状態と言えます。
その場合は早めに既存顧客が離れていく問題を解決する必要があります。
カスタマーサクセスのKPIを設定する目的は、お客様の成功を通じて自社の商品やサービスの売上を維持し拡大することです。
つまりこの目的に合致したKPIを設定することができなければKPIを達成しても売上の維持や拡大ができません。
アクションが無駄にならないようにKPIを正しく設定することが重要です。
KGIは「Key Goal Indicator」を略した用語で「重要目標達成指標」と訳されます。
KGIは企業や組織で年度末に達成したい経営目標を数値化したものです。
このKGIを達成するためにはやるべきプロセスがたくさん出てきます。これらのプロセスをWBSに落とし込んでスケジュール化したものが行動計画です。
KGI、CSF、KPIの三者を図式化したものが以下の図となります。
カスタマーサクセスというコンセプト自体が「お客様の成功を通じて売上の維持、拡大をする」ということですので顧客視点で考えることが重要です。
販売側が顧客視点で考えることには限界がありますし、自社に都合の良い考えが入り込む可能性もあります。
したがって、お客様へのヒアリングやアンケートなどでリサーチすることも考えるべきです。
自社の商品やサービスを通じてお客様の成功をしてもらうためにはどのようなKPIが最適なのかは、KGIから逆算的に考え、目標が達成できるのかを確認することによって把握できます。
環境が変化すればKPIを見直しすることは当然です。たとえば、新型コロナ禍が発生していない段階で作成したKPIは新型コロナ禍が発生した段階で見直す必要があります。
前提条件が変化すればKGIへ到達するためのプロセスも変化しますので、対応するKPIも柔軟に変更すべきです。
KPIを設定した後はその数値に向かってプロセスを実行していきます。
実行した結果がKPIを達成できなかった場合は、問題点を見つけて即座に修正していく必要があります。
まさにPDCAを回して改善していくことになりますが、PDCAを回すためには結果が短期間でみることがで出来なければいけません。
たとえば、KPIとして「オンボーディング完了率」を選択した場合にお客様が習熟するのに6ヶ月もかかるようなサービスだと1年間で2回しか回せないことになり、気づいたときには手遅れにもなりかねません。
このような場合であればオンボーディングを細分化して、初回ログイン、レベル1のチュートリアル完了などをKPIとして設定するのが適切です。
PDCAを回しやすいKPI設定を行うことも必要な配慮の一つです。
カスタマーサクセスでは顧客視点からのKPI設定が重要となります。
つまり、お客様の成功とは何か、その成功を最大限に支援するためには自社の商品やサービスに対する課題は何かを考えていかなくてはなりません。
今回の記事を参考にして自社に最適なKPIを見つけ出してみてください。
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