ECサイトで商品やサービスを販売していると返品は避けられない事象であり、返品は販売する上で必要なサービスと、とらえるべきものです。
つまり、返品はユーザーが負担と感じさせずに手軽に行えて、受け入れるECサイト側も工数をかけずにスムーズに処理できるようにシステム化と手順の整備をすべき対象です。
返品手順の中には商品の在庫処理や返金処理と並んで、会計処理も含める必要があります。
今回の記事では返品が発生した場合の会計処理について解説しています。
「簿記自体が難しいのに例外処理の返品は余計にわからない」
「経理にお願いしているが台帳を見せてもらっても正しいかどうか判断できない」
「ECサイト運営の片手間で記帳しているが返品の仕訳が正しいか自信がない」
などとお考えのECサイト担当者の方に必見です。
返品の際の仕訳作業とは?
ECサイトで返品が発生した場合、在庫処理や返金と言った作業以外に会計処理を行う必要があります。
当然ですが、お客様が商品を購入した際には売上が発生していますので、台帳には売上が記帳されています。
そして、その商品が返品されるということはこの売上が帳消しとなりますので、その売上が相殺されるような会計処理をする必要があります。
普通、企業では複式簿記で日々の取引を記録しており、この取引を「勘定科目」に振り分けて簿記に記録していきます。
この「勘定科目」に振り分ける作業を「仕訳」と呼んでいます。
複式簿記では全ての取引を記録していきます。つまり、返品があった場合は過去の該当する売上の記録を削除したり編集したりすることはせずに返品を一つの取引として記録します。
結果として、売上と返品のそれぞれの取引が記録として残ることになり、この二つの記録で取引を取り消す処理がされることになります。
つまり、返品の際の仕訳作業とは売上の取引が取り消されるように仕訳することを指しているのです。
返品作業の仕訳方法
記帳方法には主に「三分法」と「分記法」がありますが、一般的には「三分法」が使われています。
今回の説明では「三分法」で仕訳を説明していきます。
三分法での返品仕訳方法
メーカー(販売側)とECサイト(仕入側)との間での分記法による返品仕訳について説明します。
◆想定シチュエーション
1. メーカーはECサイトに商品10個(単価100円)を1,000円で販売しました。代金は掛けとしています。
2. その後、ECサイトに納品した商品のうち2個が不良でメーカーへ返品されました。
メーカー(販売側)から見た仕訳
[販売時の仕訳]
三分法の場合は下記のように記帳します。
借方
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金額
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貸方
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金額
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売掛金
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1,000円
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売上
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1,000円
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[返品時の仕訳]
販売した商品が返品された時点で、以下のように販売時とは逆の仕訳をします。
借方
|
金額
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貸方
|
金額
|
売上
|
200円
|
売掛金
|
200円
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ECサイト(仕入側)から見た仕訳
[仕入時の仕訳]
三分法の場合は下記のように記帳します。
借方
|
金額
|
貸方
|
金額
|
仕入
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1,000円
|
買掛金
|
1,000円
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[返品時の仕訳]
仕入れた商品を返品した時点で、以下のように仕入時とは逆の仕訳をします。
借方
|
金額
|
貸方
|
金額
|
買掛金
|
200円
|
仕入
|
200円
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次にECサイト(販売側)と購入者との間での三分法による返品仕訳について説明します。
◆想定シチュエーション
1. 購入者はECサイトから商品1個を200円で販売しました。購入者はクレジットカードで支払いをしています。
2. その後、商品の不良が発覚して購入者はECサイトへ返品しました。
3. 返金はクレジットカード経由で行われます。
ECサイト(販売側)から見た仕訳
[販売時の仕訳]
三分法の場合はカード会社への手数料を考慮して下記のように記帳します。
借方
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金額
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貸方
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金額
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クレジットカード売掛金
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190円
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売上
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200円
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支払手数料
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10円
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[返品時の仕訳]
販売した商品が返品された時点で、以下のように販売時とは逆の仕訳をします。
クレジットカードの決済では返金はクレジットカード経由で行い、該当する決済の決済手数料は発生しません。
借方
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金額
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貸方
|
金額
|
売上
|
200円
|
クレジットカード売掛金
|
190円
|
|
|
支払手数料
|
10円
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ここまで説明してきた返品時の仕訳方法は販売時や仕入時の貸借反対仕訳をする方法です。
それぞれの売上・仕入勘定を直接減額・控除して純売上高・純仕入高を記載する純額主義です。
純額主義とは別に返品の額を明らかにするために「売上戻り」「仕入戻し」勘定を用いる総売上高・総仕入高を記載する総額主義もあります。
一般的な会計処理としては純額主義が実務上行われています。
仕訳の際の注意点
仕訳方法は2つある
前項の「返品作業の仕訳方法」では一般的に使われている「三分法」を説明しました。
「三分法」とは別に「分記法」という方法での記帳もあります。
例えば、メーカー(販売側)とECサイト(仕入側)との間で、メーカー(販売側)から見た仕訳を分記法で仕訳すると以下のようになります。(原価@80円の前提とします)
[販売時の仕訳]
分記法の場合は下記のように記帳します。
借方
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金額
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貸方
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金額
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売掛金
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1,000円
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商品
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800円
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商品売買益
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200円
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[返品時の仕訳]
販売した商品が返品された時点で、以下のように販売時とは逆の仕訳をします。
借方
|
金額
|
貸方
|
金額
|
商品
|
800円
|
売掛金
|
1,000円
|
商品売買益
|
200円
|
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分記法の場合は商品売買益が記帳されますので、決算時に仕訳する必要はありません。
また、リアルタイムで商品売買益勘定から経営成績を見ることができます。
ただし、記帳する都度、仕入原価を確定する必要がありますので、一般的なECサイトでは現実的な作業とはなら図、通常では分記法を採用することはありません。
返品の会計処理は2つある
前項の「返品作業の仕訳方法」で触れましたが、
・ 売上、仕入勘定を直接減額、控除して純売上高、純仕入高を記載する純額主義
・「売上戻り」「仕入戻し」勘定を用いる総売上高、総仕入高を記載する総額主義
の2つがあります。
企業会計としては「総額主義」が原則とされていますが。実務上から「純額主義」が一般的だとされています。
ただし、会社でどちらの方式を採用しているかは確認するべきです。
計上する会計年度
返品された商品がいつの会計年度で販売されたかは関係なく、返品がされた時点の会計年度で計上します。
仕入諸掛が含まれている場合
仕入に仕入諸掛が含まれていた場合にどのように処理すべきか迷う場合があります。
例えば商品100個を単価1,000円の掛けで購入し、運賃を現金で5,000円支払い、その後、返品10個が発生したような場合です。
[仕入時の仕訳]
借方
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金額
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貸方
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金額
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仕入
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105,000円
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買掛金
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100,000円
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現金
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5,000円
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[返品時の仕訳 その1]
借方
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金額
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貸方
|
金額
|
買掛金
|
10,000円
|
仕入
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10,500円
|
支払運賃
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500円
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[返品時の仕訳 その2]
借方
|
金額
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貸方
|
金額
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買掛金
|
10,000円
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仕入
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10,000円
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その1の仕訳は個数に応じて運賃が変動する場合、その2の仕訳は運賃が個数によらずに一定の場合に行うようにします。
まとめ
今回の記事は返品が発生した場合の仕訳について説明しました。
返品は例外の処理ですが、考え方としては逆の仕訳を行う「純額主義」か「売上戻り」「仕入戻し」の科目を使う「総額主義」かのどちらかになります。
実務上では「純額主義」が用いられていることを説明しました。記帳方法には「分記法」と「三分法」があり、一般的に使われている「三分法」で仕訳を説明しました。
どの方式を用いるかは会社で使われている方式に合わせて記帳する必要があるので注意してください。
このように複雑な返品作業ですが、ECサイトで商品やサービスを販売していると返品はなかなか避けられず
返品は商品を販売する上で必要なサービスと考えるのが当たり前になってきています。
ですので「どう返品作業を効率化するか?」などが重要になってきます。
Recustomerは、返品や交換をシステム化することで業務効率化を行うことができるサービスを提供しています。
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