2020年は新型コロナが消費者の行動に大きな影響を与えました。巣ごもり需要の高まりと非接触が進みました。
特に「食」の分野では外食と外での飲酒の激減と中食と宅食の増加が著しい傾向になっています。
この変化は新型コロナが終息しても、元通りになるのではなく一定程度は定着するとみるのが妥当でしょう。
新型コロナによる変化に対応して「食」の販売形態も実店舗からオンラインストアへの移行の波が押し寄せています。
今回の記事ではこれらの影響をデータで示して、うまく変化の波に乗って成功した事例を紹介しています。
「コロナの影響で実店舗の売り上げ減をネット販売でカバーしたいけど何からすればいいか分からない」
「食品ECのコロナの影響を受けた後の動向を知りたい」
「手元資金に余裕がないので、リーズナブルな費用で開発してくれる会社を知りたい」
などとお考えのECサイト担当者の方には必見です!
目次 1. 食品分野のEC市場規模 3-1-1. 巣ごもり需要の取り込みが可能 3-1-2. 商圏の拡大 3-1-3. 食品の詳細やストーリーが伝えやすさ 3-2-1. 生鮮食品の取り扱いが実店舗より格段難しい 3-2-2. 複数購入の時の引き当て管理が難しい 3-2-3. 実店舗の利便性を越す提案の提示が難しい 4-1. 筋肉食堂 4-2. おうちで鶴亀食堂 4-3. 食べチョク 6-1. ANVIE株式会社 6-2. 株式会社レタス 6-3. 有限会社フード・ページ |
食品関係(食品、飲料、酒類)のEC市場規模は経済産業省の調査によると2018年で1兆6919億円です。
カテゴリーで見ると規模としては衣類・服飾雑貨等に次いで2番目の規模となります。詳細は下図をご参照ください。
市場規模は2番目と大きいですが、食品は毎日、口にするもので当然の数字ともいえます。
つまり、一人あたりの金額にすると年間で約1万3500円となり、これを一日あたりに直すと約37円と少額です。
日常的に消費する食品ですのでEC市場として見た場合はまだまだ未開拓分野といえます。
2018年の物販系分野内での各カテゴリーの構成比率(単位:億円)
出典:経済産業省「平成30年度我が国におけるデータ駆動型社会に係る基盤整備(電子商取引に関する市場調査)報告書」
食品ECの市場規模の潜在的なポテンシャルが大きく、新型コロナをトリガーとして急速に食品ECの需要が拡大していることが理由として上がります。以下に詳細に説明します。
下図は総務省家計調査より2020年1月と2021年1月を比較して増減率を表したものです。
下記の図からは外食から自宅で食べることが多くなっていることが読み取れます。
また、「一般社団法人 全国スーパーマーケット協会」など3団体による「スーパーマーケット統計調査2020 年 年間集計 確報版」によれば、スーパーマーケット270社の売上高は前年比106.3%と売上を伸ばしています。
いわゆる巣ごもり需要がこれらのデータによって証明されています。
出典:総務省家計調査より グラフ作成
食品の分野は金額では各カテゴリーの中で2位です。
しかしEC化率の観点で見ると、下図のように底辺に近く事務用品・文房具の約40%に対して約2.6%しかありません。
日本のEC 市場規模とEC 化率(商品カテゴリー別)
出典:経済産業省「平成30年度我が国におけるデータ駆動型社会に係る基盤整備(電子商取引に関する市場調査)報告書」よりグラフ作成
では何故食品分野のEC化が遅れてるのでしょうか?食品分野のEC化率が低い理由は次の調査結果で分かります。
下図は2017年に行われた29ヶ国/地域の2万4471人に調査した結果のものです。
食料品に対しては実店舗で購入する人が70%に対してオンラインでは23%にとどまります。
「食品ECの3つの課題とAmazon・楽天等の取り組み紹介」によれば、食料品のEC化が進まない理由は3点あります。
・手に取って鮮度が良いものを選びたい需要があり、ECサイトと相性が悪い
・スーパーやコンビニの利便性に、食品ECサイトが勝てない
・ネット事業者の配送料負担
しかし、コロナ禍により鮮度については他者と接触してしまう実店舗の買い出しを控える傾向にあります。
また、ネットで完結する利便性の方が優位と感じられるようになってきてハードルが下がりつつあります。
コロナ禍で巣ごもり消費に目覚めた消費者のマインド変化はコロナ禍が収まっても定着してきており、上記のような課題のハードルはかなり下がってきていると思われます。
EC化率が低いと言うことは競合者が少ないので、新規参入するにはベストのタイミングです。
食品ECを始める販売者にとってのメリットとデメリットについて以下に説明します。
コロナ禍で明らかなように実店舗以外にネット上にECサイトを持つことはリスクヘッジにもなりますので全てのお店が考えるべきものです。従って、メリットについては自社にとって最大限に活用するための方策を考えるためのもので、デメリットは不利益もしくは障害を最小限にするための方策を考えるために活用してください。
食品をECサイトで取り扱う場合のメリットは3点あります。
・巣ごもり需要の取り込みが可能
・商圏の拡大
・食品の詳細やストーリーが伝えやすい
コロナ禍により外出や他の人と接触することへの忌避感から内食の増加とオンラインで購買が日常になりつつあります。
なので巣篭もり需要に対する直接的な対応が可能となっています。
食品スーパーの商圏は都会では約700m、地方では約2kmといわれていますが、ECサイトにショップを開くことにより日本全国あるいは全世界へ広げることが出来ます。
実店舗では伝えることが難しい生産者のこだわりや背景にあるストーリーなどを十分に伝えることが出来ますのでユーザの共感を得やすいです。
食品をECサイトで取り扱う場合のデメリットは3点あります。
・生鮮食品の取り扱いが実店舗より格段に難しい
・予約時や複数購入の場合の引き当て管理が難しい
・下記のような実店舗の利便性を越える提案の提示が難しい
ECサイトではユーザが実際に手に取って鮮度を確認することが出来ません。
また、鮮度を落とさずに配送できる物流網が必要なので実店舗とは別の対応を取る必要があります。
ECは実店舗と比べてECサイトでは在庫管理、ピッキング、配送などバックオフィスの手間が多く利益が上げにくいです。
また、生鮮食品の冷蔵設備などの初期費用や配送コストなどの変動費も重荷になります。
実店舗では食品を実際に手に取って鮮度や品質を顧客自身で確認できますが、ECでは実際に手に取る作業が出来ません。
生鮮食品などは鮮度が命なのでそこに対して訴求をすることが難しいです。
食品ECサイトを開設しているオンラインストアの中で成功している事例を下記にご紹介します。
TANPAC株式会社が運営する冷凍宅食便「筋肉食堂DELI」のECサイトです。
レストラン「筋肉食堂」ではカラダ作りを志している人たちへ美味しい「高タンパク低カロリー」料理を提供していましたが、新型コロナの影響で来店客数と売上が激減してしまいました。
お弁当の提供(中食)も同社は行っていましたが、緊急事態宣言により周辺オフィスが在宅ワークに切り替わってしまい、売上が激減してしまいました。お客様がレストランやお弁当の販売場所まで来れなくなったユーザに届けたいという思いでECサイトを3週間で開設しました。実際に、1ヶ月で数千食が販売出来ています。
◼︎成功要因
・カラダ作りを志している人たち向けというこだわりを持った食材
・Instagramを活用した集客効果
・迅速なECサイトのオープン
一般社団法人歓迎プロデュースが運営している食品ECサイト「おうちで鶴亀食堂」です。
宮城県気仙沼で食堂と銭湯を運営していますが、新型コロナの影響で来店できないユーザを元気づけるためにECサイトを立ち上げました。ECサイトは一人で運営していると在庫保管ができないので、予約注文で運営することにより対応しています。ECでは伝えることが難しい「人の温かさ」も効果的に訴求している良い成功事例です。
◼︎成功要因
・気仙沼の空気感を味わってもらう工夫
・徹底したローコスト運営
・ユーザとの関係構築を考えた工夫(おまけ袋、おかみさんの動画など)
株式会社ビビッドガーデンが運営している産直通販サイトの「食べチョク」です。
今までご紹介したECサイトとは違って、全国の生産者と消費者を結びつけるマーケットプレイスです。
新型コロナが日本で確認されてから緊急事態宣言下の2020年2月から5月までの3カ月間で流通総額が35倍に増加し、登録ユーザー数も2月末から7月末までの半年間で13.8倍に伸びた実績があります。
こちらのECサイトの手法についても一般の食品ECに参考になるかと思いますのでご紹介します。
◼︎成功要因
・生産者とユーザを直接つないだこと
・生産者からの直送となるので鮮度を確保
・生産者のこだわりや背景が直接ユーザに伝わる
・ユーザの好みに合わせた提案をする定期購入の「食べチョクコンシェルジュ」
・ネットに不慣れな生産者も出品できる「ご近所出品」
・初回注文時に送料500円負担(2021年3月21日終了)
従来ECに向いている食品は、販売サイドはコストが吸収しやすく配送料が気にならない商品ということとユーザサイドからは近くのお店にはない高級食材のような商品が主流でした。また、ギフトにおいてもお中元やお歳暮でお世話になった人へ贈るオフィシャルギフトに使われる商品が主流でした。
しかし最近の傾向ではお誕生日や出産祝いなどのようなプライベートギフトで贈る、オフィシャルギフトほど高単価ではない商品がECサイトで売れる傾向として出てきています。さらに新型コロナ下においては巣ごもり需要の高まりと感染防止のために非接触が望まれるようになり中食や宅食のための食材をECサイトで購入されるようになってきています。
自宅での日常的な消費なので単価は低くなり、餃子やハンバーグ、惣菜、冷凍食品、レトルト食品などが購入されるようになっています。売れる商品が移ってきているというよりも幅が広がってきているとみた方がいいでしょう。
表にまとめると下記のようになります。
従来型 |
新傾向 |
コロナ後 |
|
説明 |
・こだわり ・ストーリー性 ・唯一無二の生産者 ・高単価商品 |
オフィシャルギフト(中元・歳暮)からプライベートギフト(誕生日、出産祝い、父の日、母の日)へのシフト |
・買い出しを控えたい ・ちょっと楽したい ・災害に備えた備蓄 |
具体例 |
・高級食材 ・ギフト用食材 |
・高級洋菓子 ・高級和菓子 ・ブランド米 ・日本酒 |
・惣菜加工品 ・レトルト食品 ・冷凍食品 |
食品ECは他のカテゴリのECサイトとは違った特性があります。
代行サービスを選ぶ上では食品ECを構築した実績をヒアリングして見極めるべきです。
1998年7月に設立された会社で、大阪を拠点とする独立系のIT企業です。
EC-CUBEなどのオープンソースを利用したECサイトの構築や、複数モールへの出店、基幹システム連携なども行っています。
構築事例として、自然食品を中心とした卸売業者のECサイト再構築があります。
また、同社が開発しサービス提供している「スマデリver.3 クラウドサービス」を宅配型飲食店に販売しています。
会社名 |
株式会社レタス |
所在地 |
大阪市中央区北浜2-5-23 小寺プラザ3階 |
電話 |
06-6221-3250 |
構築費用 |
EC-CUBEサイト構築:50万円~ ECサイト構築:30万円~ ECサイトと基幹システム連携:300万円~ |
URL |
2000年2月に設立された会社で、飲食店専門のホームページ制作会社です。
飲食店向けのホームページ制作を専門にしている会社で、ホームページの制作以外にメニューブックの制作や写真撮影、動画制作まで対応しています。ECサイト構築では要件ヒアリングをもとにして最適な設計で構築するオリジナルデザインプランと事前に用意されたテンプレートを選んで構築するテンプレートデザインプランが提供されています。
会社名 |
有限会社フード・ページ |
所在地 |
東京都世田谷区野沢1-35 |
電話 |
記載なし |
構築費用 |
オリジナルプラン:初期費用 74万円 月次固定費プラン 5千円より テンプレートデザインプラン:初期費用 18万円 月次保守・利用料 5千円より |
URL |
食品ECは新型コロナをトリガーとして、従来は実店舗で購入していたような食品もネットで購入するようになっていますのでEC化率が高まっていくと思われます。
競合も少ないのでチャンスは多い分野ですので、実店舗だけを運営しているお店もネットに店舗を持つことを検討すべきです。
食品ECではEC全般で言われている実際に手に取れないなどのデメリット以外にも工業製品とは違って同じ商品名でも一つ一つ状態が違っていたり、消費期限・賞味期限を意識した在庫管理や引き当てといった管理の違いがあります。
食品ECならではの注意点を熟知した開発会社に依頼するのが成功への早道です。
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