ECサイトにおいて「返品」は避けて通れない課題です。
実店舗とは違って、商品を手に取ったり試着したりすることができないためサイトに掲載されている写真などで判断して購入することになります。
そのため商品が到着して実際に購入者が目にしたり身につけたりすると、購入前のイメージと違ったり、サイズが合わなかったりしてしまいます。
ECサイトでは返品を受け入れないとユーザーは不安になり購入を控えるようになります。
最近の傾向では返品を受け入れるポリシーはユーザー側に寄り添ったものになっているのが多くなっています。
出荷に対し返品される割合
出典:株式会社エルテックス「通信販売事業関与者の実態調査2021」
上記の図は通販事業者300名へのアンケート結果で、返品率は5~10%が多いということが読み取れます。
また、実店舗においても 「年2回の棚替え・季節品」などの理由により返品が発生しています。
公益財団法人流通経済研究所が行った、2015年度の「日用雑貨・OTC医薬品の返品実態調査」によると小売業から卸売業への返品率は日用雑貨で2.77%、OTC医薬品で3.35%となっています。
「返品」はECサイトにおいてはサービスの1つとして受け入れるべきものですし、実店舗においてはやむを得ず発生してしまうものです。つまり、「返品」は業務としてきちんと定義し、継続的に効率化・改善を行っていくべき対象なのです。
そこで本記事では、返品の業務効率化についてまとめました。
「返品は競合他社と同等以上のポリシーにしているが工数が掛かり利益を圧迫している」
「返品の問合せでカスタマーサービスの作業が煩雑になっている」
「返品処理を効率化したいがどこから手を付けていいかわからない」
などと考えている方には必見の記事です。
業務効率化の流れ
業務の効率化は以下のように進めていきます。
1. 現状把握と業務の可視化
メンバー全員が一定の間隔でその時に何をしていたかを記録します。
次に各人が持っている業務のフローを作成します。
各人の業務フローをつなぎ合わせて全体の業務フローを作成して、そこに測定した業務に必要な時間を記載します。
2. 効率化を行う業務を選択
観点としては発生頻度が多いものや工数が多いもの定型化しやすいものを選びます。
3. 効率化する方法を検討し実施
現状の業務フローをそのまま自動化するのはやめてください。
なぜなら、無駄な作業がそのまま固定化する恐れがあるためです。
まずは、
・作業の重複がないか
・手待ちがある場合は順番を変えられないか
・似たような業務を統合できないか
・そのアウトプットは必要とされているのか(惰性でやっていないか)
といった観点で削除できないかを検討してみてください。
削除した上で自動化を検討します。
4. 評価とさらなる改善の検討
実際に目標とした工数なり時間に達成しているかを評価して足りない部分がある場合はさらに効率化を検討していきます。業務効率化のステップを上記に示しましたが、工数はかなり必要となります。
しかも、通常業務と並行して行うことになりますので、メンバーから反発が出る可能性は高いです。
業務効率化のキックオフではなるべく上位役職の人が責任者として出席して推進する強い意欲を見せる必要があります。また、業務効率化を行うと以下に挙げるようなメリットかあるということを参加者全員で共有して脱落者を出さずに進めることが重要です。
業務効率化のメリット
次に、業務効率化によるメリットを紹介します。
従業員のモチベーションが向上する
業務は極力マニュアル化して、誰がやっても同じ品質で同じ結果を出せるようにするべきです。
しかし、ルーチンワークをミスのない作業を求められるメンバーは時間が経つにつれモチベーションが低下します。モチベーションが低下すると効率が悪くなり、品質が劣化していき、そしてある日大事故が発生してしまいまう事態になりかねません。
業務効率化をメンバー全員で行うことは、メンバー個々人に業務に対する効率化の意識を植え付けるのに良い施策であると言えます。
普段の業務遂行においても常に改善点はないか、品質を上げる点はないのかという意識を持って行動するようになりますのでモチベーションの維持につながります。
また、効率化のアイデアを出したメンバーにはインセンティブを支払うということをして積極的に支援することも考えてみてはいかがでしょうか。
新規事業開発・新しい施策に力を注げる
業務効率化することにより、時間(工数)と費用が削減することができます。
つまり、リソースが空くことになりますので、空いたリソースを新規事業開発や新たな施策へ投資することが可能となります。
新規事業を立ち上げることによりメンバーのモチベーションもアップすることができますので積極的な活動を期待することができます。
返品業務を効率化するポイント
返品業務を効率化する観点には大きく分けて以下の2点があります。
1. 返品そのものを削減
2. 返品業務の効率化
以下にそれぞれに関して説明します。
返品そのものを削減
返品が発生する要因ごとに削減策を説明します。
【自社都合によるもの】
返品の要因
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削減策
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受注ミス
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営業が介在して受注作業を行う場合に人的ミスにより発生しますので、お客様から直接受注システムへ入力して頂くことで防ぐ。
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商品不良
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検品の強化や委託先製造ラインの品質体制確認をします。
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棚替え・季節品
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受注予測の精度を上げることや在庫情報を店舗間で共有して流通させます。
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新商品との入れ替え
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メーカーとの情報共有と新商品発表前の旧製品欠品を怖れた過剰仕入を抑制します。
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【お客様都合によるもの】
返品の要因
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削減策
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イメージ相違
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写真だけではなく動画や3Dなどの活用を行います。
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サイズ違い
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サイズを簡単に測定できるツールの導入や実際に使った観点からのサイズ情報を記載しイメージしやすいようにします。
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返品業務の効率化
返品業務の概略フローは以下の通りです。
上記の流れを詳細な業務フローに落とし込んでいきます。
ポイントは、業務マニュアルがあっても必ず現場で作業している担当者に確認するか、担当者自身に現在行っている業務フローを可視化させることです。なぜなら、現場の工夫や他部署やシステム間連携で当初作成した業務マニュアルから変更が出ている可能性があるからです。
業務フローが完成したら、「業務効率化の流れ」の章で説明した手順で、効率化すべきタスク、削減すべきタスクを洗い出し、対処していきます。最後に自動化を検討します。
以下に返品のフローごとの自動化の観点を説明します。
ステップ
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自動化の観点
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返品依頼
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依頼受付の自動化(Web化)
返品可否判定の自動化
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返品手続
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配送業者の自動手配
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受領確認
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受領確認メールの自動化
在庫反映の自動化
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返金
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経理システムとの連携
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返品業務を効率化させるサービス3選
上記で説明した返品業務を効率化させる方法は、手作業でやろうとするととても大変です。
そんな時に利用したい、返品業務効率化に便利なサービスを2つ紹介いたします。
1. Recustomer
2. CASH POST
自動化ツールを利用することで業務コストの削減だけでなく、顧客体験の向上にも繋がります。
ぜひ、参考にしてみてください。
Recustomer
RecustomerとはRecustomer株式会社が開発・運営している「返品・交換・キャンセル自動化ツール」です。
業務を自動化することで、時間とコストの削減や顧客体験の向上を実現します。
返品・交換や注文キャンセル依頼の受付・承認から、メール返信、返金作業、交換商品の在庫確認、在庫引き当て、キャンセル時の発送停止などの業務を自動化します。
・返品(返金)、交換、キャンセルの自動化
Recustomer returnは、返品(返金・交換)・注文キャンセルを自動化することができます。
購入者はECサイトと連携した返品・キャンセルフォームより、注文番号などの必要情報を入力しアクセスした後
返品商品や返品理由などを選択するだけで簡単に返品リクエストを送ることができます。
EC事業者は、受け付けた返品リクエストを顧客情報・注文情報が紐づいた状態で管理することができ、ステータスを変更することで、購入者に次のアクションを依頼する自動メールが送信されます。
EC事業者が顧客と返品に関するコミュニケーションを取る必要がなく、業務効率を向上させることができます。
さらに、顧客の要望にシステムが自動で対応するため、人が対応する以上に返品スピードを向上させることが可能です。
・自動集荷機能
配送業者と連携することにより、ボタン一つで集荷を手配することができます。
購入者の返品業務の負担を軽減することで、顧客体験の向上を実現します。
・WMS・CSツール連携
自動出荷システム「LOGILESS」クラウド型カスタマーサービスツール「zendesk」などの連携ができます。これにより、交換商品の出荷指示や在庫管理の自動化、チケット管理の一元化が可能になります。
CASH POST
CASH POSTは株式会社イーコンテクストが運営している送金・返金業務を効率化する送金サービスです。
面倒な送金・返金業務を簡単にし、送金のお悩み・ストレスを一気に解決することが可能です。
【特徴】
1. API連携による返金業務の効率化
APIによりシステム連携が可能となりますので、送金データを自動登録が実現できます。
2. 手数料コストの削減
現金書留・郵便為替と比較して1件あたり40円以上手数料を削減できます。
3. セキュリティリスクなし
管理画面でお客様のメールアドレスと返金額を登録するだけなので個人情報を管理する必要がありません。
4. お客様の受け取り方法
銀行振込、ローソン、ドコモ口座、セブン銀行ATM
5. オプションでSMSまたは圧着はがきによる送金案内可能
まとめ
今回の記事では「返品」を業務効率化という観点から解説してみました。
効率化と聞くと最初から自動化を想定してしまいがちですが、自動化は業務効率化の最後にすべき施策です。
まずは現状の業務フローを明らかにして、無駄な部分を削除し、似たようなタスクは統合することによって効率化できないかを考えるべきであり、上記の検討・対処を行ってから自動化を検討してみましょう。
業務効率化する対象は「返品」業務だけではありませんが、タスクとして経理的な戻しと在庫の戻しが入ってきますので業務フローとしては難易度の高いものになっており、担当者の負荷も高くなっているはずです。
是非、「返品業務」を業務効率化する対象としてみてはいかがでしょうか。