ECサイトを運営していると、一度は耳にする「カゴ落ち(カート放棄)」。
これは、ユーザーが商品をカートに入れたにもかかわらず、最終的に購入に至らないまま離脱してしまう現象を指します。実際、多くのECサイトでは70%以上のユーザーがカゴ落ちしているとも言われており、放置すれば売上や顧客満足度に大きな損失をもたらします。
なぜユーザーは購入直前で離脱してしまうのでしょうか?
そして、どうすればその離脱を防ぎ、CVR(転換率)を改善できるのでしょうか?
本記事では、「カゴ落ちとは何か?」という基本から、発生する原因、具体的な対策方法、ツール活用、さらに成功事例までを徹底解説します。
ECサイトの売上改善に取り組むすべての方に役立つ実践的な内容をお届けします。
「カゴ落ち」とは、ユーザーがECサイトで商品をカート(買い物かご)に追加したにもかかわらず、購入手続きに進まず、サイトを離れてしまう行動を指します。英語では「Shopping Cart Abandonment(ショッピングカート放棄)」とも呼ばれ、世界中のECサイトが直面する共通課題です。
カートに商品を入れるという行動は、ユーザーが購買意欲を持っている証拠です。しかし、そのまま購入しないまま離脱するケースは非常に多く、一般的にカゴ落ち率は60〜80%にのぼるとされています。
ユーザーが「今は買わなくてもいいかな」「思っていたより送料が高い」「入力が面倒」と感じた瞬間に、購入プロセスから離脱してしまうのです。これは非常にもったいない機会損失であり、ECサイト運営者にとっては見過ごせない問題です。
カゴ落ちは、一見するとユーザーの気まぐれのように思えますが、実際にはサイト側の設計・情報提供・体験設計に原因があることも多いです。
たとえば、配送情報が分かりづらい、決済方法が少ない、セキュリティ面で不安を感じるなど、細かなストレスがユーザーの購買意欲を削いでいる可能性があります。
つまり、カゴ落ちは売上を伸ばすうえで最大の「取りこぼし」ポイント。ここを改善することで、広告費や集客施策を最大限に活かし、転換率(CVR)とLTV(顧客生涯価値)の向上につなげることができます。
次のセクションでは、カゴ落ち率の計算方法や、目安となる数値について解説します。どれくらいの割合でカゴ落ちが発生しているのかを知ることが、改善の第一歩です。
「カゴ落ち率」は、カートに商品を追加したユーザーのうち、最終的に購入に至らなかった割合を示す指標です。計算式は以下の通りです。
カゴ落ち率(%)=(カート追加数 − 購入完了数)÷ カート追加数 × 100
たとえば
この場合のカゴ落ち率は
(1,000 − 300)÷ 1,000 × 100 = 70%
つまり、7割のユーザーが購入せずに離脱していることになります。
カゴ落ち率と混同しやすいのが「購入完了率(CVR)」です。
それぞれの違いをまとめると以下の通りです。
指標名 |
対象母数 |
意味 |
カゴ落ち率 |
カート追加ユーザー |
カートに入れたのに購入しなかった割合 |
購入完了率(CVR) |
サイト訪問者全体 |
訪問者のうち購入に至った割合 |
つまり、カゴ落ち率は“あと一歩”で離脱してしまったユーザーの分析に役立ち、購入完了率はサイト全体のコンバージョン力を示す指標として活用されます。
カゴ落ちはどのECサイトにも起こるものですが、その割合には業種や商材、ターゲット層によって違いがあります。以下は一般的な業界別のカゴ落ち率の目安です。
業種・カテゴリ |
平均カゴ落ち率の目安 |
アパレル・ファッション |
65〜80% |
家電・ガジェット |
70〜85% |
美容・コスメ |
60〜75% |
食品・日用品 |
55〜70% |
高額商材(家具・旅行など) |
80〜90% |
このように、高単価の商品ほど比較・検討が長引き、カゴ落ち率も高くなる傾向があります。
「うちのサイトのカゴ落ち率は高すぎるのでは?」と感じたら、まずは業界平均と比較したうえで、自社の導線やフォーム設計に改善点がないかを見直してみましょう。
ユーザーが「商品をカートに入れたのに購入に至らない」理由は、単なる気まぐれではありません。多くの場合、購入直前での不安やストレスが原因となって離脱しているのです。ここでは、ECサイトにおいてよく見られるカゴ落ちの主な要因を解説します。
購入手続きの途中で、思っていた以上の送料や決済手数料が加算されると、ユーザーは一気に購入意欲を失ってしまいます。
こうしたギャップは「不信感」や「割高感」につながり、カゴ落ちの大きな要因になります。
購入前に強制的な会員登録を求められたり、入力項目が多すぎるフォームに直面したりすると、ユーザーは面倒に感じて離脱しやすくなります。
特にスマホユーザーにとっては、入力の手間=離脱のリスクと直結します。
「いつ届くか分からない」「希望日に間に合わない」といった不安があると、ユーザーは購入を控えます。
特にギフトや急ぎの購入ニーズでは、配送条件が曖昧なだけで即離脱される可能性が高まります。
ユーザーが希望する決済方法が選べないと、購入を諦めるケースが少なくありません。
最近では多様な決済ニーズに応えることが、購入完了率の向上に直結する要素になっています。
せっかく商品を選んでも、サイトの操作性が悪いとスムーズに購入まで進めません。
とくにモバイルユーザーの割合が高い現在、スマホ最適化が不十分なサイトはカゴ落ちのリスクが高まります。
「このサイトで本当に買って大丈夫?」と少しでも思わせてしまった時点で、ユーザーは購入を躊躇します。
信頼性が感じられないサイトは、特に初回訪問者の離脱率が高くなる傾向にあります。
「カートに入れたけど、購入に至らなかった」― この行動が積み重なることで、ECサイトの売上やブランド力に少なからぬ悪影響を与えます。
ここでは、カゴ落ちを放置することによって発生する3つの主なデメリットを解説します。
カゴ落ちは、「あと一歩で売上になるはずだったユーザー」を失う行動です。
商品をカートに入れる段階まで来ているということは、購入意欲が高いユーザーです。そのような見込み客が離脱してしまうのは、極めて大きな機会損失です。
たとえば
放置しておけば、それだけ本来得られたはずの利益が流出している状態となります。
集客に広告を活用している場合、カゴ落ちは広告費用対効果(ROAS)やCPA(顧客獲得単価)を大きく悪化させる要因になります。
せっかくの広告費も、カゴ落ちを防げなければ“穴のあいたバケツ”に水を注いでいるような状態になってしまいます。
購入途中で離脱されたということは、ユーザーが「使いにくい」「不安がある」「魅力が伝わらない」と感じた可能性が高いということです。
これは顧客体験(CX)の低下につながり、結果としてブランド全体の印象や信頼性にまで悪影響を及ぼす恐れがあります。
カゴ落ち=目に見えない“不満のサイン”ともいえるため、早期に対応することで顧客ロイヤルティの低下を防ぐことができます。
カゴ落ちはECサイトにおける大きな機会損失ですが、適切な対策を講じることで、コンバージョン率の向上とLTVの最大化が見込めます。ここでは、特に効果の高いカゴ落ち対策を6つ紹介します。
購入直前の離脱原因として多いのが「入力の面倒さ」です。フォームの項目を減らし、入力しやすくすることで離脱率を大きく下げることが可能です。
購入体験をスムーズにし、“面倒くさい”を感じさせない工夫がCVR向上のカギです。
購入手続きの途中で突然現れる追加料金は、ユーザーに強い不信感を与えます。
「後出し料金」を避けることで、購入前後のギャップを減らし、離脱を抑えられます。
会員登録が必須だと、“今すぐ買いたい”ユーザーの離脱を招きます。一時的な購入ニーズに応えるため、ゲスト購入機能は非常に有効です。
ゲスト購入を用意することで、初回購入のハードルを下げ、リピーターへの橋渡しがスムーズになります。
ユーザーがカートに商品を入れたまま離脱した場合、一定時間後にリマインドメールを送ることで購入を促進できます。
カゴ落ちメールは、もっとも費用対効果の高いリカバリー施策のひとつです。
離脱しそうなユーザーに対し、行動履歴に応じたポップアップやクーポンを表示することで、コンバージョンを後押しできます。
適切なタイミングと内容で表示することで、ユーザーとのエンゲージメントを強化できます。
特にスマートフォン経由のユーザーが多い現在、モバイル最適化はカゴ落ち対策の基本中の基本です。
“使いやすさ”は購入率を左右する大きな要素。サイト設計を「お客様目線」で見直すことが、CVR向上の近道です。
カゴ落ちは、感覚や勘だけでは対処しきれません。「どこで」「なぜ」ユーザーが離脱しているのかを可視化し、適切なアプローチを取るには、専用ツールやサービスの活用が非常に効果的です。ここでは、カゴ落ち防止に役立つ代表的なツールやその活用法を紹介します。
カゴ落ちユーザーに対し、自動でリマインドメールを送信できるツールは、カゴ落ち対策の基本施策のひとつです。
“忘れていただけ”なユーザーを呼び戻し、売上を回収できる施策として非常に有効です。
ユーザーの離脱理由を感覚で判断せず、実際の動きを可視化して把握できるのがヒートマップツールやセッションリプレイツールです。
データに基づいた改善点を特定できるため、UI/UXの具体的な見直しに直結します。
複数の改善案を試しながら、どれが最も効果的かを数値で比較できるのがA/Bテストツールです。特に、ボタン文言や色、バナー表示方法、クーポン表示のタイミングなど、ちょっとした変更でもCVRが大きく変わることがあります。
定量的な検証を重ねることで、「効果がある施策」に集中でき、カゴ落ち対策をより効率的に進められます。
カゴ落ち対策は、正しい施策を適切に実行すれば、明確な成果として数字に表れます。ここでは、実際にCVR(コンバージョン率)の改善につながった企業の事例を3つ紹介します。どのような対策が功を奏したのか、改善前後の比較も交えて見ていきましょう。
課題
カート追加まではスムーズだが、購入完了率が低く、特にスマートフォンからの離脱が多い。
対策内容
結果
特にスマホからの購入完了率が大幅に改善され、広告費の効率も上がった。
課題
フォーム離脱率が高く、購入完了までの導線でユーザーが迷いやすかった。
導入ツールと施策
結果
ユーザー視点のUI改善がCVR向上に直結した好例であり、社内のデータ活用にもつながった。
業種: 化粧品ECサイト
導入サービス: Recustomer 配送追跡・返品・自宅で試着
取り組み内容
成果
Recustomerの導入によって、購入前後の不安が軽減され、顧客体験の向上と売上回収を両立することができた好事例です。
カゴ落ちは、ECサイト運営における「あと一歩」の取りこぼしです。しかし、原因を正しく理解し、適切な対策を講じることで、確実に改善できる領域でもあります。
購入フォームの見直しや送料表示の工夫、カゴ落ちメールの活用、UI/UXの最適化といった取り組みを通じて、コンバージョン率を高め、売上の最大化と顧客満足度の向上を同時に実現することが可能です。
まずは自社のカゴ落ち状況を把握し、ユーザー目線でサイトを見直すことから始めましょう。それが、ECの成長に直結する第一歩です。
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