コロナ禍以降、オンライン販売の重要性が急速に高まり、日本でも多くの企業や個人が「EC事業者」として新たな市場に参入しています。
しかし、「そもそもEC事業者とは何か?」「どんな種類やビジネスモデルがあるのか?」「実際の業務フローや運営で押さえるべきポイントは?」といった疑問を持つ方も多いのではないでしょうか。
本記事では、「EC事業者とは?」の基本的な定義から、ビジネスモデルの種類、市場規模、実際の業務フロー、KPI(重要指標)、運営のメリットや課題、そして最低限知っておきたい関連法規まで、2025年最新版の視点でわかりやすく解説します。
これからECを始める方はもちろん、すでに運営中の方や、BtoB企業・D2Cブランドの責任者にも役立つ情報を網羅。記事内では最新の公的データや成功事例も交えつつ、「自社のEC運営をどのように成長させるか?」のヒントもご紹介します。
「EC事業者とは?」の全体像を一気に理解し、競争が激化するネットビジネス市場で勝ち抜くための知識と実践ノウハウを、ぜひこのガイドで押さえてください。
EC事業者とは、インターネットを通じて商品やサービスを販売・取引する事業者全般を指します。
一言で「EC(Electronic Commerce=電子商取引)」といっても、そのビジネスモデルや販売チャネルは多様化しています。代表的なタイプは次の4つです。
自社ECサイト型
自社独自のECサイト(公式オンラインショップ)を構築・運営し、商品やサービスを直接販売します。顧客データや売上・利益を最大限自社でコントロールできるのが特徴です。
ECモール出店型
楽天市場・Amazon・Yahoo!ショッピングなどの大規模なECモールに店舗を開設し、モール内で販売を行う形態です。集客力や販促力を活用しやすい反面、モール手数料やルールの制約を受けやすい面もあります。
D2C(Direct to Consumer)モデル
メーカーやブランドが仲介業者を介さず、自社ECやSNSを活用して直接消費者とつながり販売する新しい形態です。ブランディングやリピーター育成に強みを発揮します。
BtoB(企業間取引)型EC
企業同士の部品・資材・サービスなどの取引をEC化するケースです。オンライン見積もりや受発注システムの導入で、取引コスト削減や業務効率化につながっています。
このように、「EC事業者」と一口にいっても、自社ECかモールか、BtoCかBtoBか、ブランド直販かで戦略や業務フローは大きく異なります。
EC事業は多くの関係者(ステークホルダー)が連携して成り立っています。
主な役割は以下の通りです。
このような各機能がスムーズに連携することで、顧客体験(CX)の質が高まり、競争力のあるEC運営が実現します。
日本のEC市場は年々拡大を続けており、2025年もその成長が期待されています。
BtoC物販系EC市場規模
2023年時点で約14.6兆円、BtoC-EC化率は9.38%まで上昇
BtoB-EC市場規模
2023年時点で約465兆円、BtoB-EC化率は40.0%と拡大傾向
コロナ禍を経て消費者の購買行動が一気にデジタル化し、D2Cやサブスクリプション、スマホ・SNS経由の購買も急増しています。今後はOMO(オンラインとオフラインの融合)やAIの活用など、新たな成長トレンドにも注目が集まっています。
参考:経済産業省「令和5年度 電子商取引に関する市場調査」2024年
EC事業を成功させるには、「商品を仕入れて売る」だけではなく、顧客体験や業務効率も考えた全体最適なフローを設計することが大切です。ここでは、典型的なEC事業者の業務フローを6つのステップで解説します。
まずは「何を売るか」がビジネスの成否を分けます。自社オリジナル商品、厳選した仕入れ品、トレンド商品など、“ここでしか買えない”価値の設計がスタート地点です。
市場調査や顧客ニーズの分析を踏まえ、独自性・価格・品質のバランスを意識した商品ラインナップをつくりましょう。
次に重要なのが「売り場」づくり。ECサイトやモール内店舗の構築・運営では、見やすく・迷わず買えるUI/UX設計がカギです。
こうした工夫がCVR(購入率)やLTV(顧客生涯価値)向上に直結します。
優れた商品やサイトがあっても、「見つけてもらえなければ」売上は伸びません。
複数チャネルを組み合わせ、認知拡大・新規獲得・リピート促進のバランスを取ることが、持続的な集客のポイントです。
注文が入ったら、受注処理と決済フローを速やかに行う体制が重要です。クレジットカード、Amazon Pay、PayPay、コンビニ決済、後払いなど、顧客ニーズに応じた多様な決済手段の導入がコンバージョンを押し上げます。
また、注文情報や顧客データはセキュアに管理し、マーケティングやCRM(顧客関係管理)にも活用します。
「いつ届くのか」「今どこにあるのか」など、配送体験もECの満足度を左右します。
在庫管理・ピッキング・発送業務の効率化はもちろん、Recustomer配送追跡サービスのように、以下のような購入後も“安心できる体験”を提供できる仕組みづくりが、リピートやファン化に直結します。
最後に、返品や交換・カスタマーサポート対応も顧客満足を左右する大きなポイントです。
このように購入後の不安や疑問を迅速に解消し、ブランドの信頼感を高めることが重要です。
EC事業を成長させるには、「なんとなく運営」ではなくデータに基づいた改善サイクル(PDCA)が欠かせません。そのためには、KPI(重要業績評価指標)の正しい設定と、成果を“見える化”する計測ツールの活用が必要です。
まずは、何を成果の物差しにするか=KPIを明確にしましょう。
主な基礎KPIは次の通りです。
売上高
最終的な事業成果。日別・週別・月別・年別で把握。
CVR(コンバージョン率)
サイト訪問者のうち、実際に購入した人の割合。=「購入数÷訪問数」。
LTV(顧客生涯価値)
1人の顧客が生涯を通じてどれだけ購入してくれるかの平均値。
リピート率
リピーターの割合。
カゴ落ち率
カートに商品を入れたものの、購入まで至らなかった割合。
これらKPIは、集客→購入→リピートまで一連の流れで設定し、常に数値を可視化しておくことが改善の出発点となります。
無料で高機能なGoogle Analytics 4(GA4)は、ECサイトのアクセス解析・購買行動分析に必須のツールです。
さらに、Looker Studio(旧Data Studio)と連携すれば、
が可能になり、現状の把握→課題特定→施策実行のサイクルが圧倒的に回しやすくなります。
本格的なEC運営・CRM強化を目指すなら、MA(マーケティングオートメーション)ツールの導入もおすすめです。
BrazeやKlaviyoは、メール・SNS・プッシュ通知などマルチチャネルの施策管理ができるだけでなく、以下のことも可能です。
特にKlaviyoはShopifyなど主要ECプラットフォームと強力に連携し、「どのマーケ施策がECの成長に直結しているか?」を可視化するのに最適です。
EC事業者としてビジネスを展開することで、実店舗や従来型ビジネスにはない大きなメリットを得ることができます。ここでは、特に重要な3つの利点にフォーカスして解説します。
EC(電子商取引)の最大の強みは、「時間と場所の制約を受けずに、常に商品やサービスを提供できる」点です。
実店舗では営業時間や立地によって売上が左右されがちですが、ECサイトなら全国・世界中からの注文を24時間365日受け付けられます。
これにより、以下のように売上拡大のチャンスが大きく広がります。
EC運営では、顧客の購買データ・アクセス履歴・属性情報など、あらゆる行動データが蓄積されます。
この“データ資産”を活用することで、以下のような顧客満足度やLTV(顧客生涯価値)の最大化につながる取り組みが可能です。
自社ECサイトやD2C(Direct to Consumer)など、「直販モデル」を確立すれば、以下のことが実現可能です。
また、顧客の声や購買行動を直接フィードバックとして受け取り、商品改善やサービス向上にも素早く活かせる点も、直販ならではの大きな魅力です。
EC事業は多くのメリットがある一方で、運営していく中で避けて通れない課題も存在します。ここでは特に多くのEC事業者が頭を悩ませやすい課題と、実際的な解決アプローチを紹介します。
EC市場の拡大とともに「物流コストの高騰」は業界全体の大きな課題です。特に、注文が増えるほど「小口配送」「即日配送」などへの対応コストも膨らみやすく、都市部以外への配送や繁忙期のラストワンマイル(顧客への最終配達)も悩みの種です。
解決アプローチ
ECは「手に取って確認できない」ため、どうしても返品やキャンセルの発生率が高くなります。この対応に多くの時間とリソースを割いてしまい、本来の業務に集中できないと悩む事業者も少なくありません。
解決アプローチ
返品・交換・キャンセル業務を自動化するにはRecustomer返品・キャンセルがおすすめ。
「問い合わせ対応」「クレーム対応」「購入後フォロー」など、顧客対応は売上拡大に比例して増加します。専任担当者の人件費や教育コスト、24時間対応の難しさも課題です。
解決アプローチ
物流・返品・サポート…これらの運営課題を根本から解決するには、DX(デジタルトランスフォーメーション)ツールの活用や、信頼できる外部パートナーの選定がカギです。
たとえば以下のような手法を組み合わせることで、「成長にブレーキをかけない運営体制」を構築できます。
EC事業を安心・安全に運営するためには、最低限の法規制への理解と対応が欠かせません。難しい法律の細かい条文をすべて覚える必要はありませんが、「どんなルールがあるのか」「何を表示・手続きすればいいのか」を把握しておきましょう。
適用範囲
ネットショップ・ECモールを含む通販すべてが対象
主な義務
・運営者情報(氏名・住所・電話番号等)の表示
・商品・送料・支払い方法・返品条件の明記
・注文取消し・クーリングオフ規定(業態により異なる)
注意点
表記漏れや虚偽記載は行政指導・罰則の対象に
適用範囲
ECに限らずすべての「表示」「広告」に適用
主な義務
・「実際より著しく優良・有利に見せかける」広告の禁止
・過大な景品(値引き・キャンペーン等)提供の上限ルール
注意点
2023年以降、ステルスマーケティング規制にも注意
公式ガイドリンク
一部の商品や業種では、ECで販売する場合にも特別な許可や届出が必要となります。
商品・業種 |
必要な許可・届出 |
相談先例 |
酒類 |
酒類販売業免許(国税局) |
税務署 |
医薬品・医薬部外品 |
薬局・販売業許可 |
都道府県薬務課 |
化粧品・健康食品 |
製造販売届出/食品衛生法 |
保健所 |
古物(中古品) |
古物商許可(警察署) |
警察署 |
食品全般 |
食品衛生法の営業許可、HACCP対応など |
保健所 |
詳しくは業界団体・自治体・管轄官庁の公式サイトで必ず最新情報を確認しましょう。越境EC(海外向け販売)の場合、輸出入規制や現地法にも注意が必要です。
EC事業者の役割や業務フロー、押さえておきたいKPI、メリットと課題、関連法規まで、2025年最新版の視点で解説してきました。
今やEC事業は「売って終わり」ではなく、購入前後すべての体験価値(CX)を高め、そこから得られるデータを次の成長につなげることが成功のカギです。
これからのEC事業運営は、以下のことがますます重要になっています。
本記事の内容を参考に、自社の現状や成長課題を客観的に見直し、「選ばれるEC事業者」「長く愛されるブランド」へと進化するための一歩につなげていただければ幸いです。顧客体験とデータ活用、この両輪を武器に、ぜひ持続的なEC成長を実現してください。
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