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F2転換率は2回目の購入率!転換率を高める7つの施策も紹介
EC事業において「F2転換」は、売上やLTVを大きく左右する重要なKPIのひとつです。F2転換とは、初回購入(F1)をした顧客が、2回目の購入(F2)へ至ることを指し、その割合を示すのが「F2転換率」であり、以下の式で算出されます。
F2転換率 = 2回目の購入者数 ÷ 初回購入者数 × 100
この数値は、広告コストをかけて獲得したF1顧客が、どれだけリピーター化しているかを定量的に示し、EC事業のリピーター獲得力を表す指標として非常に重要です。たとえばF1が1,000人いても、F2が100人ならF2転換率は10%となり、この割合が低ければ、LTVも積み上がらず、広告投資の効率も上がりません。
実際、多くのEC事業者がF2転換率の向上を目指し、さまざまな施策を実践しています。この記事では、F2転換率を高めるための具体的な7つの施策を紹介するとともに、F2転換の重要性や成果につながらない要因について、わかりやすく解説してまいります。
F2転換率を高めるための7つの実践施策
それでは、代表的な7つのF2転換施策を解説します。
◆F2転換率を高めるための7つの実践施策
施策① 手書きメッセージの添付や購入後のフォローメール
施策② サンプルやクーポンなど「次の購入」を促す同梱施策
施策③ 初回購入後のクーポン配信で再購入を後押し
施策④ パーソナライズされたリコメンド配信
施策⑤ レビュー募集と特典による再購入の促進
施策⑥ 初回購入直後に定期便を提案し、F2転換を着実に促す
施策⑦ SNSを通じた継続的な接点づくりでF2転換を後押しする
いずれも業種を問わず実践しやすく、成果につながりやすい施策ですので、ぜひ参考にしてください。
施策①手書きメッセージの添付や購入後のフォローメール
初回購入の“余韻”があるうちに、顧客との関係を深める施策です。商品に手紙や冊子を同梱したり、メールでブランドの想いや使い方の情報を届けることで、ただの「物売り」ではなく「人との接点」として記憶に残ります。
中でも有効なのが、「手書きのメッセージ」です。わざわざ手を動かして書いてくれたという事実が、ブランドへの親近感と信頼を育みます。以下は、筆者がECサイトで日用品を購入した際に、商品に同梱されていたメッセージカードです。
◆商品同梱の手書きメッセージの例(筆者私物)
※ショップ名は伏せています
外包装などは捨てましたが、このメッセージカードは温かさを感じてなんとなく保管していたのですが、1ヶ月ほど経ったころ、このカードが目に留まり、再びその店でリピート購入しました。こうした“捨てにくさ”や“思い出しやすさ”も、手書きの大きなメリットです。
このように、購入体験そのものを顧客の記憶に残すことができれば、次回の購入行動につながる確率は大きく上がります。特に、手書きのメッセージなどは手間はかかりますが、F2転換を狙ううえでは、最初の接点の“後味”まで丁寧に設計することが大切です。
施策②サンプルやクーポンなど「次の購入」を促す同梱施策
F1顧客をF2に引き上げるためには、「次回も購入したい」と思わせるきっかけを設計することが重要です。その一つとして有効なのが、試供品やパンフレット、次回使えるクーポンなどの同梱物を通じたアプローチです。
たとえば、初回購入の商品に合わせて関連商品のサンプルや、新商品の紹介パンフレットを同梱することで、顧客の関心を継続させることができます。また、期間限定のクーポンを添えることで、再購入の動機づけにもなります。
以下は、筆者の同僚がDECORTÉ(コスメデコルテ)の化粧品を初めて購入した際に同梱されていたナイトクリームの試供品です。
◆同梱サンプルの例(DECORTÉ)
※筆者の同僚私物
商品の特長や使用方法が丁寧に説明されており、実際に使ってみたことで関心が高まり、本人は後日、同ラインの製品を追加で購入しています。
このように、再購入を促す具体的な“提案”を初回体験の中に組み込むことで、顧客との継続的な接点を生み出すことが可能です。同梱施策は、DMと比べて大きなコストをかけずにF2転換率を高められるため、実践しやすい施策の一つといえます。
施策③初回購入後のクーポン配信で再購入を後押し
施策②でも述べたように、F2転換へつなげるためには、「次回購入の理由づけ」を早期に設計することが重要です。その代表的な手法が、初回購入直後に配信するクーポン付きのサンクスメールです。
購入直後は、ブランドに対する好意度や興味が高まりやすいタイミングでもあるため、適切な訴求がなされれば自然な流れでリピートへとつながります。
筆者があるアパレルショップで初めて買い物をした際、商品到着より前に以下のようなクーポン付きメールが届きました。
◆実際に筆者が受け取ったメールの内容
【◯◯様】先日はご購入ありがとうございました / △△△名
◯◯様
△△△店です。この度はお買い物ありがとうございました。
次回のお買い物で使える550円クーポンプレゼント!
自動的に付与されていますので、購入確認画面にてご利用ください。
・クーポン対象商品合計金額から550円値引き
・5,500円以上のお買い上げで利用可能
・利用期限:2021年10月31日(日)23時59分まで
▼クーポンについて詳しくはこちら
https://www.△△△.jp/xxx/coupons#C0000000
▼クーポンの使い方はこちら
https://www.△△△.jp/xxx/coupon
※ショップ名は伏せていますが、実際に配信されたメールの内容です
このように、購入直後に「次回購入に使える特典」を明示することで、次のアクションが明確になり、再購入の動機が生まれやすくなります。
また、特典としてはクーポンだけでなく、ショップポイントの自動付与も有効な手段です。次回以降に利用できるポイントが自動的にアカウントに付与されていることで、「また利用しよう」という気持ちを引き出しやすくなります。
◆クーポンとポイントの特性
クーポン:利用期限を設定して、短期的なリピートを促進
ポイント:中長期的な再訪インセンティブを醸成
顧客属性や業態によって、これらを組み合わせて活用することも可能です。このように、初回購入の直後こそ「次回の購入」を視野に入れた導線づくりの好機であり、特典設計によってF2転換率は大きく左右されます。
施策④パーソナライズされたリコメンド配信
F2転換率を高めるためには、初回購入の体験を起点としながら、ユーザーに対して「次に選ぶべき商品」を的確に提示することが重要です。特に有効なのが、パーソナライズされたリコメンド(商品提案)を含む配信施策です。
顧客が購入した商品や閲覧履歴に基づいて、興味関心の高い商品をタイミングよく案内することで、再訪と購入の動機づけにつながります。
たとえば、ある生活雑貨のECサイトで「ルームフレグランス」を初めて購入した顧客に対して、数日後に以下のようなメールを配信します。
◆購入履歴に基づいたレコメンド配信例
「アロマディフューザー」をご購入いただいた◯◯様へ
先日ご購入いただいた「アロマディフューザー」はいかがでしたか?
ご自宅の空間づくりをより豊かにするアイテムとして、当店では下記のような商品も人気です。
・同シリーズのリードディフューザー
・持ち運び可能なアロマミスト【新商品】
・香り別のおすすめ特集ページはこちら
→ ◯◯様におすすめの商品を見る
※内容は筆者作成
このように、過去の購入内容と紐づいた提案であることが明確であれば、「これは自分に向けられた案内だ」という印象が強まり、開封率・クリック率の双方で高い効果が期待できます。
また、リコメンドを配信するチャネルとしては、メールに限らずLINE公式アカウントやアプリのプッシュ通知なども有効です。媒体ごとの特性に応じて配信タイミングや文面を調整することで、より効果的な再接点設計が可能となります。
このように、顧客の購買履歴や行動データに基づいた“意味のある提案”は、F2転換率を高めるための重要な施策といえます。単なる一斉配信ではなく、個別最適化された提案こそが、リピートを促すカギとなります。
施策⑤レビュー募集と特典による再購入の促進
F1顧客に対してレビュー投稿を促すことは、F2転換率を高めるうえで非常に効果的な施策です。レビューを書くという能動的な行動によって、購入体験の記憶が定着しやすくなり、顧客との関係がより深まります。
また、レビュー完了後にクーポンやポイントを付与することで、再購入へのインセンティブも明確になります。以下は、筆者がユニクロで商品を購入した際に届いたレビュー依頼メールです。
◆筆者が受け取ったユニクロのレビュー依頼メール
このメールでは、レビューを投稿することで「商品モニター」への応募権を得られる仕組みが案内されており、当選者にはモニター商品と引き換え可能なクーポンが提供されます。
このように、レビューの投稿という行動を再購入の導線につなげる構成は、F2転換率の改善に効果的です。
さらにレビューは、F2転換だけでなく、初めてECサイトを訪れる顧客の購入判断にも大きく影響します。他の顧客の声を確認できることで、「実際どうなのか?」という不安が軽減され、初回購入率の向上にもつながります。レビューを通じて、顧客が安心して購入できる環境を整備することは、EC全体の購買率向上にも寄与します。
なお、2023年10月から施行された「景品表示法に基づくステルスマーケティング規制」により、レビュー投稿に対して特典(クーポン・ポイント等)を付与する場合には、その旨を明記することが義務化されています。
たとえば、
「レビュー投稿で◯◯ポイント進呈(※投稿時にその旨を表示)」
「レビュー投稿後に特典がある場合、事前にユーザーに明確に伝える」
といった適切な表示が必要です。また、評価の高低に関係なく、投稿内容を操作・修正・削除しないことも重要であり、違反すると措置命令の対象となるため、F2施策としてレビューを活用する際には、法令順守を徹底することが不可欠です。詳しくは、下記の消費者庁によるガイドブックをご覧ください。
参考:消費者庁「景品表示法とステルスマーケティング~事例で分かるステルスマーケティング告示ガイドブック~」
このように、レビュー施策は「体験の記憶化」「再購入の後押し」「初回購入の不安解消」という3つの効果を持つ、F2転換における非常に実践的なアプローチです。適切な仕組みと法令順守を前提とすれば、LTV向上に寄与する強力な接点となります。
施策⑥初回購入直後に定期便を提案し、F2転換を着実に促す
2回目の購入が「定期便」という形式でなされるケースもF2転換のひとつとして考えることができます。このようなF2への導線として、初回購入の直後に定期購入モデル(サブスクリプション)への案内を組み込む手法は非常に有効です。
特に、継続使用が前提となるスキンケアやサプリ、日用品などでは、F2の段階で定期購入に移行してもらえるかどうかが、その後のLTVや収益性に大きく影響します。
以下は、先ほども事例として紹介したDECORTÉ(コスメデコルテ)の商品購入時に、商品と一緒に同梱されていた定期お届け便の案内です。
◆定期購入案内のフライヤー(DECORTÉ)
※筆者の同僚私物
「満足度100%」「送料無料」「サイクル選択可」「30mL本品進呈」など、継続購入のメリットがわかりやすく整理されており、初回購入直後に次の購入形態として定期便を自然に意識させる内容となっています。
定期アップ施策の実施においては、以下の点がポイントとなります。
◆施策のポイント
・商品の使用前後に「次回購入の手間をなくす」という文脈で定期便を提案する
・送料無料や単価を下げるなど「定期便限定特典」を設定し明示する
・「解約OK」「スキップ可」「自動リマインドあり」などの設計で、申込時の心理的障壁を下げる
定期便は、顧客にとっては“購入の手間を省ける便利な仕組み”であり、企業にとっては“売上が月次で安定する”という双方にとってのメリットがあります。特に、1回目の使用で効果や使用感に満足してもらえた場合、そのタイミングで定期提案を行うことで、F2転換とLTVの向上を同時に実現できます。
施策⑦SNSを通じた継続的な接点づくりでF2転換を後押しする
F2転換を促すうえで、初回購入後の接点をいかに持続できるかは極めて重要です。そのための手段として有効なのが、InstagramやXなどのSNSを活用したブランド接点の継続です。
初回購入時にSNSアカウントへのフォローを促し、その後の投稿によってブランドの存在や新商品の情報を自然にリマインドすることで、F1顧客の離脱を防ぎ、F2への移行を後押しすることができます。
筆者自身、アパレルECサイトで初回購入をした際には、ほぼ必ずブランドのInstagramアカウントをフォローしています。そして多くの場合、数日〜数週間後にフィードで「新作入荷」や「再入荷」の投稿が流れてきて、そこから商品ページにアクセスし、2回目の購入につながるという流れを繰り返しています。
このように、SNSは単なる広告メディアではなく、“思い出させる”ことで購買行動を促すリテンションチャネルとして機能しています。
特にアパレルECにおいては、SNSからの流入がF2転換につながるケースが非常に多く、“継続的なブランド想起”の仕組みづくりとしてSNS活用は欠かせない要素となっています。
◆アパレルブランドのInstaframアカウント
引用元:UNITED ARROWS Instagram公式アカウント(@unitedarrows_official)
このように、SNSはF2転換率を高めるための“購買後のリマインド装置”として活用することができます。顧客との接点が途切れない設計を心がけることで、広告やキャンペーンに頼らずとも自然な再購入が生まれる土壌が整います。
もし、自社のSNSアカウントを運用しているのであれば、初回購入時に必ずSNSアカウントのQRコードを同梱したり、メールでアカウントに誘導するなどして、フォローを促すようにしましょう。
それでは次に、F2転換がEC戦略において重要とされる理由について、詳しく解説してまいります。
F2転換が重要視される3つの理由
F2転換が重視される理由には、実務的な経験則だけでなく、マーケティング理論や顧客行動の構造が深く関係しています。
◆F2転換が重視される3つの理由
理由① 新規獲得コストが高騰し、既存顧客の活用が不可欠になっている
理由② リピーターが売上の中心を支えている
理由③ F2がブランド定着・LTVの分岐点となる
これらの理由から、F2転換は多くのEC事業者が注力する最重要KPIの一つとされています。以下に、一つずつ詳しく解説します。
理由①新規獲得コストが高騰し、既存顧客の活用が不可欠になっている
F2転換が重視される最も根本的な理由は、新規顧客の獲得コストが年々高騰しているという市場環境の変化にあります。SNS広告やリスティング広告に代表される獲得施策は、運用型広告の競争激化と媒体費の上昇により、近年では以前のような費用対効果が得にくくなっています。
総務省の「情報通信白書2023」によると、インターネット広告費は過去10年で約2.5倍に拡大しており、なかでも運用型広告(SNS広告や検索連動型広告)が大きくシェアを伸ばしています。これらはECを含むデジタル事業者にとって新規顧客獲得の主な手段とされていることを踏まえると、獲得単価が年々上昇していることは明らかです。
◆日本の媒体別広告費の推移
※水色の縦縞のグラフがインターネット広告費
引用元:総務省「情報通信白書2023」図表4-3-2-8
出典:電通「2022年 日本の広告費」
マーケティングの分野では、「1:5の法則」がよく引用されます。これは、新規顧客を獲得するコストは、既存顧客を維持するコストの5倍かかるとされ、顧客戦略を考えるうえでの基本的な前提とされています。
ここで特に重要なのが、初回購入で得られる利益だけでは、獲得コスト(CPA)を回収しきれないケースが多いという点です。むしろ、2回目の購入でようやく回収ラインに乗るという構造のほうが一般的です。そのため、F2転換は単なる収益拡大の手段ではなく、初回施策の回収工程としても不可欠なプロセスといえます。
したがって、F1顧客(初回購入者)をいかにF2顧客(リピーター)へと引き上げるかは、費用対効果の観点から見ても、最も合理的なマーケティング戦略のひとつといえます。F2転換に成功すれば、新たな広告費をかけることなく売上を積み上げることができ、広告への過度な依存からも脱却できます。
F2転換率の向上は、獲得単価の最適化やLTVの向上、ROAS(広告費用対効果)改善といった経営指標全体の最適化にも直結し、収益構造の持続的な強化につながります。
理由②リピーターが売上の中心を支えている
F2転換が重要視されるもう一つの理由は、売上の大半が「リピーター」によって支えられているという収益構造にあります。ECやD2Cを含む多くの小売ビジネスでは、一度きりの購入では利益が出にくく、繰り返し購入してくれる顧客こそが事業の土台となります。
この構造を示すものとして有名なのが、「パレートの法則(80/20の法則)」ですが、これは「全売上の80%は、全顧客のうち上位20%の優良顧客が生み出している」という考え方であり、LTV戦略やCRM設計の基本的な前提とされています。
そして、その優良顧客(=リピーター)のスタート地点となるのがF2転換、つまり2回目の購買です。F2に到達しないかぎり、その後のF3、F4といった中期リピーターも、さらにF5以降のロイヤル顧客も育ちません。F2は通過点であると同時に、リピーターとして育成できるかどうかの分岐点でもあります。
特にアパレルや日用品のように商品単価が比較的低く、1回あたりの利益率が高くない商材では、「何度も買ってもらうこと」そのものがビジネスモデルの前提ですから、リピーターを育てられないということは、売上の大半を失うことを意味します。
このように、売上構造の中でリピーターの比重が大きい以上、F2転換の成否はその後の売上の積み上げに直結する要素といえます。
理由③F2がブランド定着・LTVの分岐点となる
F2転換が重視される理由として、F2が顧客とブランドの関係が定着し始める起点であるという点も挙げられます。初回購入は、プロモーションによる一時的な関心や価格訴求によって獲得された購買である場合も多く、顧客側に明確なブランド選好が形成されていないケースも少なくありません。
一方で、2回目の購買(F2)に至った場合、顧客は一度その商品やサービスを体験したうえで再度購入していることになります。この段階からは、単なる商品選択ではなく、ブランドに対する期待・納得・信頼といった要素が購買行動に影響を与え始めると考えられます。
CRMツールやMAツールの多くでも、F2を基準にアクティブ顧客と非アクティブ顧客を分けるロジックが一般的です。F2は、その後のF3・F4への転換、あるいは定期購入や会員化といった中長期的な関係構築の入口となるため、LTV(顧客生涯価値)の分岐点として位置付けられています。
初回購入からF2への移行が一定水準で達成されているかどうかは、そのブランドの持続性や事業成長力を見極める指標の一つとしても有効です。
このように、F2転換は「収益性」「LTV」「ブランド定着」といったあらゆる指標に関わる、EC事業の基盤となるプロセスですが、その重要性は十分理解されているものの、実際にはF2転換率がなかなか改善されないケースも多く見られます。次項では、その主な原因について詳しく解説します。
F2転換率が伸びない3つの要因
F2転換の重要性は多くのEC事業者に共有されており、実際にさまざまな施策が実行されています。しかしながら、施策を講じているにもかかわらず、F2転換率がなかなか改善されないというケースも少なくありません。
F2転換率が伸び悩む主な原因は、以下の3点です。
◆F2転換率が伸びない3つの要因
要因① 初回購入の体験設計が不十分である
要因② リピーターが売上の中心を支えている
要因③ F2がブランド定着・LTVの分岐点となる
これらの要因について、それぞれの背景と対処の方向性について詳しく解説してまいります。
要因①初回購入の体験設計が不十分である
F2転換率が伸び悩む最も基本的な要因の一つは、初回購入時の顧客体験に満足感が不足していることです。初回購入は、顧客にとってブランドとの最初の接点であり、以後の購買行動を大きく左右します。
たとえ商品自体に問題がなくても、配送の遅延や梱包の乱れ、同梱物の不備、問い合わせ対応の不親切さなどがあれば、「もう一度買おう」とは思われにくくなります。逆に、商品に加えてスムーズな配送、丁寧なメッセージや適切なフォローがあれば、顧客満足度は高まり、F2への意欲も自然に生まれます。
なお、F1顧客を価格訴求や割引クーポンなどで獲得した場合は特に注意が必要です。購入動機が「価格の安さ」に偏っていると、体験価値が相対的に弱くなり、再購入につながりにくいという弱点を抱えることになります。F2転換を促す施策を講じる前に、まずは初回体験の設計が適切かどうかを見直すことが不可欠です。
本記事で紹介した7つの施策も、初回購入の体験価値を高める効果的な施策なので、積極的に実施していきましょう。
要因②F2への導線がそもそも設計されていない
F2転換率が低迷する要因として、F1顧客を再購入へと導く仕組みそのものが設計されていないケースがあります。初回購入で終わってしまうのは、顧客が商品に不満を持ったからというだけでなく、再訪・再購入のきっかけが提供されていないだけという可能性があります。
たとえば、以下のような状態ではF2転換は起こりにくくなります。
◆F2への導線が欠如している例
・購入直後のサンクスメールは送っているが、その後のフォローアップがない
・SNSやLINEへの誘導がなく、ブランドとの接点が継続しない
・マイページや購入履歴画面に再購入を促す導線が存在しない
・再購入を後押しするクーポン・ポイント・新着案内が設計されていない
また、F1獲得施策とF2育成施策が組織的に分断されているという課題もあります。たとえば、以下のようなケースです。
◆F1獲得とF2育成が分断されている例
・広告運用チームがF1獲得を担い、F2施策は別チームや外部パートナーに任されている
・初回購入時のキャンペーンや訴求内容が、F2へのフォロー施策に引き継がれていない
・F1時点の顧客データがF2施策に活かされていない
このような体制では、F1顧客が放置されやすくなり、F2への自然な接続が断たれてしまいます。F2転換は自然発生するものではなく、明確な導線設計と接触計画があって初めて機能するプロセスです。
本記事で紹介したようなフォローメールや同梱物、SNS誘導やポイント訴求といった施策も、「いつ」「どこで」「何を届けるか」まで踏み込んだ設計があってこそ効果を発揮します。
再購入を期待するのではなく、再購入までの行動を逆算し、意図的に設計しておくことが不可欠です。
要因③F2までのタイミング設計が適切でない
F2転換率が思うように伸びない理由として見落とされがちなのが、「いつ再購入を促すか」というタイミング設計の誤りです。いくら内容のある施策を準備していても、届けるタイミングが顧客の行動タイミングとずれていれば、効果は期待できません。
特に重要なのは、商品カテゴリごとに再購入を検討し始める時期が異なるという点です。たとえば、食品や飲料のように消耗が早い商材と、家電や化粧品のように使用期間の長い商材では、F2に至るまでの期間に明確な差があります。以下のグラフをご覧ください。
◆商品カテゴリ別 再購入訴求タイミングの目安
※グラフ:筆者作成
上図は筆者が独自に作成したグラフですが、一般的な業界慣習やCRM施策に基づく目安から、商品別に再購入を促すタイミングを可視化したものです。正確な再購入時期は、商品やブランド、販売チャネルによって異なる場合があります。
以下に、各カテゴリごとの傾向と背景を簡単に補足します。
食品・飲料
D2C型の食品通販では、配送から1週間前後で再購入を促すメールが一般的。消費サイクルが早く、習慣化しやすいカテゴリ。
コスメ
スキンケア用品などは、使用開始から2〜4週間が、使用感が定着するタイミング。ステップメールやサンプル同梱施策もこのタイミングで設計されることが多い。
サプリメント
30日・45日ごとの定期訴求が多く、大手製薬会社や化粧品ブランドなどでも摂取継続を前提とした再購入導線が設計されている。
アパレル
InstagramなどのSNS施策では、初回購入直後の投稿接触をきっかけに、数日〜2週間以内にF2へ至るケースが多く見られる。
家電・高価格帯商品
メイン商品のリピートは少なく、3ヶ月〜半年後を目安に、アクセサリーや関連機器のクロスセルが行われる構成が多い。
このように、施策の内容だけでなく、届けるタイミングが合っていないだけでF2につながらないケースは非常に多く存在します。
◆F2の訴求タイミングを誤った例
・送るタイミングが早すぎる:顧客はまだ使い切っておらず、必要性を感じない
・送るタイミングが遅すぎる:商品やブランドに対する記憶が薄れてしまっている
・一律でスケジュール配信している:カテゴリごとの使用サイクルに合っていない
こうしたミスマッチを防ぐには、商品ごとの平均的な消費サイクルや購買データに基づき、「誰に」「いつ」「何を届けるか」まで設計することが重要です。
CRMやMAツールを活用して、顧客の購買履歴から最適な接触時期を算出する仕組みづくりも有効です。
F2転換は、施策の“内容”と“タイミング”が揃って初めて成立します。特に定期購入やサブスクリプション化を目指す場合、顧客がちょうど次回購入を考え始めるタイミングでアプローチすることが極めて重要です。
まとめ
F2転換は、EC事業におけるリピーター育成の起点であり、LTV最大化に向けた第一歩です。単に「もう一度買ってもらう」ことが目的ではなく、初回購入によって獲得した顧客を、持続的な関係性へと導く「最初の転換点」と位置づけるべきです。
F2へのスムーズな移行が実現すれば、広告依存からの脱却、リピート率の改善、LTVの最大化など、事業の構造そのものを、より安定的かつ持続的なものに変えることができます。
そしてF2転換の施策においては、顧客の体験設計・接点設計・タイミング設計が適切に積み上がっているかという視点も重要ですが、何より、「もう一度この商品を使ってほしい」という熱意や姿勢が不可欠です。
データや設計も大切ですが、感謝の手書きメッセージや、心のこもったフォローメールなど、ユーザーに向き合った丁寧なアプローチこそが、心を動かすきっかけになるのです。