Recustomer マガジン

負担の大きい返品プロセスを、ブランド価値へ変える視点

作成者: Ryosuke Yamazumi|2025,12,19

 

返品対応は、EC事業において工数やコストの負担が大きく、長年の課題とされてきた領域です。その一方で、「売上に直結しない」「どう改善すればよいか分からない」といった理由から、改善が後回しにされるケースも少なくありません。

 

しかし、顧客との最後の接点である返品対応は、工夫次第でブランドへの信頼やリピート購入につなげられる領域です。さらに、再現性のあるプロセスを整えれば、業務効率と顧客満足を同時に実現することも可能です。

 

本記事では、現場課題を整理しつつ、返品対応を“価値ある体験”に転換するための視点を紹介します。

 

購入後体験は、ブランド価値を左右する“最後の接点”

 

これまでEC市場は、新規顧客の獲得に注力することで成長を実感しやすい環境にありました。しかし近年では、広告費の高騰やコロナ禍明けの店舗回帰を背景に、新規獲得の効率が落ち込み、かつてのような伸びは期待しにくくなっています。

 

こうした状況で注目されているのが「購入後の顧客体験」です。とりわけ返品対応は、一見ネガティブに思われがちですが、実はブランドへの信頼形成に直結する“最後の接点”でもあります。スムーズで安心感のある体験を提供できれば、「不安や不満がすぐに解消された」というポジティブな印象を残し、「またここで買いたい」と思ってもらえる理由になることもあるのです。

 

購入後体験の設計は、F2転換(初回購入からの2回目購入)やLTV(顧客生涯価値)の向上に直結するほか、近年では回収プログラムや二次流通といったSDGsの観点からも注目されており、購入後体験は事業成長とブランド価値を左右する重要な領域だといえます。

 

現場が抱えている購入後対応の業務課題

 

CS業務のなかでも、特に負担が大きい「返品対応」。その理由の1つは、処理にあたって複数部門との連携が必須であることにあります。

 

返品商品の回収には物流部門、返金には会計部門との連携が必要で、CS単独で完結できません。その結果、情報の引き継ぎ漏れや処理遅延が発生しやすく、業務がブラックボックス化するリスクも高まります。

 

さらに、やりとりが一度で終わらないことも多く、商品写真の提出や経緯の確認といった対応が長期化すれば、現場の負担はより一層大きくなります。その結果、ノウハウを持つ特定の担当者に依存する属人化が進み、対応品質のばらつきが顧客体験に悪影響を与えるケースも少なくありません。

 


小さな工夫からできる、返品対応フローの改善

 

現場のCS担当者は、日々の業務負荷から返品対応の改善が必要だと強く感じていることが少なくありません。一方で「売上に直結しない」「投資対効果が見えにくい」といった理由から、対応改善に踏み切る優先度が上がらず、結果として後回しにされてしまうケースが多いのが実情です。

 

しかし返品対応は、顧客の購入体験を「最後まで安心して完結させる」ために欠かせないプロセスです。その対応品質は、顧客満足や再購入意欲に直結し、ひいてはブランドへの信頼や売上にも大きな影響を及ぼします。

 

また、返品対応を重要な課題と認識しながらも、「どこから手を付ければよいのかわからない」と感じている企業も少なくありません。しかし必ずしも大規模なシステム導入や全面的な改革に踏み切る必要があるわけではなく、業務フローの見直しや、やりとりのフォーマットの統一など、工夫できる余地はあります。

 

H2:返品体験を“ブランド価値”に変える視点

 

ここからは、返品対応をブランドへの信頼につながる接点へと高めるための視点をご紹介します。

 

 

返品は“受け身”ではなく“設計”できる

従来の返品対応は、顧客からの要望にその都度応じる“受け身型”が一般的でした。

しかしこの方法では、担当者ごとに判断や対応に差が生まれやすく、結果として対応品質にばらつきが出たり、負荷が一部の担当者に集中したりといった課題が生まれがちです。

ここで重要なのは、返品対応を場当たり的な処理で終わらせず、再現性のあるプロセスとして整備することです。例えば、「サイズが合わなかった」「不良品だった」など、返品理由に応じた対応方針を明文化すれば、誰が対応しても一定の品質を保つことができ、属人化を防げます。

 

業務フローの棚卸しや分岐整理、マニュアルやチェックリストの整備など、対応に再現性をもたせられるように設計することで、CSにとっても顧客にとっても、安心感のある体験を提供できるようになります。

 

返品データの可視化が、改善施策の意思決定を支える

返品は、顧客にとって「困りごとを解消してくれるサポート」であると同時に、事業者にとっては貴重なフィードバックが集まる接点でもあります。

 

「返品が発生した」という事実そのものではなく、「なぜ返品に至ったのか」という背景・理由をきちんと把握すれば、今後の商品開発やマーケティング施策の見直しに活かすことができます。

 

改善のヒントが詰まった“声の資産”を構造的に整理し、見えるかたちで社内に共有できれば、コストセンターと捉えられがちなCSを、改善をリードする存在に変えることができます。

 

業務効率と顧客満足は両立できる

「効率化すれば顧客体験が損なわれる」「丁寧さを優先すれば業務が回らない」という板挟みはよくある悩みです。しかし実際には、業務効率と顧客満足はトレードオフではなく、設計次第で両立可能です。

 

例えば、返品対応のフローを明文化し標準化しておけば、担当者は迷わずスムーズに対応でき、顧客にとっても一貫した安心感のある体験を提供できます。

 

さらに、オンラインフォームやセルフサービスの導入によって、顧客が自分の都合に合わせて手続きを進められるようになれば、CSの工数削減と顧客満足の向上が同時に実現できます。このような工夫によって、現場の負担を軽減しつつ、顧客に安定した体験を提供することが可能となります。

 

“返品”を価値に変えるために、今できること

 

返品対応には常に顧客の「不安」や「迷い」が伴います。それをいかに早く、ストレスなく解消できるかが、体験全体の印象を左右します。

 

返品業務を「処理」ではなく「体験設計」として捉え直し、属人化を防ぎ、再現性と納得感のあるプロセスを整えること。この視点こそが、返品を信頼やロイヤルティにつながる体験へ変える第一歩です。

 

Recustomerは返品・キャンセル対応をはじめ、購入後体験を一元管理・最適化し、LTV向上・カゴ落ち防止・CSコスト削減を実現します。煩雑なオペレーションや属人化を見直し、再現性ある対応フローと納得感のある購入後体験を設計したいとお考えの方は、ぜひ一度ご相談ください。



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